10年目のメッセージ

日本いいもの屋


こんにちは。『日本いいもの屋』代表の裏家です。日本いいもの屋をはじめて10年になりました。

たくさんの方々に支えられて続けてくることができました。心より御礼申し上げます。

実は10年ということであっても特に何もしないでいつも通りと思っていたのですが、、
こういう機会は今後多くないでしょうし、自分達としてもここでしっかり振り返ることが今のタイミングで大切だと思うようになったので、私達のこれまでとこれからをここで記しておきます。

少し長いですので、お時間ある時にでもお付き合いいただければ幸いです。



スッカラカンからのスタート

10年前、丸1年間世界を旅して日本に帰ってきて、知識も資金もネットワークも何もない、まさにゼロの状態で始めた日本いいもの屋。
毎日、得意ではないパソコンと向かい合って「ECサイトとは」みたいなことをインターネットで調べて独学で作ったお店です。

今振り返ればよくわからないのですが、大丈夫な自信があったんです。
特に明確に理由はないのですが、うまくいく自信というよりも、いちばんダメなパターンを想像しても世界を貧乏旅していた状態に戻るぐらいのものだろうという感じ。
ぜひ今の若者にも貧乏旅は経験しておいてもらいたいです。笑

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当時の事務所兼自宅は、旧祖父宅を家族に手伝ってもらって改修していました。
実は今も日本いいもの屋の事務所兼倉庫はココ。隙間風はありますが、思い入れのある事務所になっています。

開始当時は注文がくることそのものに驚き、どこで知っていただいたのかとても不思議でした。
注文の発送も妻とふたりであたふたしながらヤマト運輸さんの営業所に持っていったことを覚えています。毎日が新鮮な驚きばかりでした。
最初の2年ぐらいは食べていくのもままならなかったので、しばらく運送会社で配達のアルバイトを掛け持ちしていました。

とはいえ、通帳残高は減る一方。スッカラカンになって旅から帰ってきたのに、まだ減っていく。笑
いまだから笑えますが、0に近いところまで減った時もありました。それでもなぜか迷いはなかったのは今思うと不思議です。

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振り返るとわかること

ECサイトというのはいわゆる楽天さんのようなモールに出店などしない限りは集客に時間がかかります。でも私たちのやりたいこと、伝えたいことを実現するには自社サイトしかありえなかった。
モールは集客ができるけれど日本のものづくりを伝える、作り手を伝えるためには中途半端になると思ってました。

なんらかのノウハウがあればもっと効率よくできたのかもしれませんが、当時全く知識もノウハウもなかったので地道にやるしかありませんでした。
でも今振り返ると、この判断がとても重要でした。おそらくモールで始めていたら日本いいもの屋は続けられていなかったでしょう。

当時の私たちにできることはお金のかからないこと。とにかく自力で朝から夜中までページづくりをしていました。
ずっとPC作業も息が詰まるので息抜きも必要と、京都に行き、龍安寺の枯山水庭園をみて「余白」の美しさを日本いいもの屋に活かそうと、アイデアをもらったりしたことも今でも覚えています。

日本いいもの屋を名乗るぐらいなので、日本のいいところは自分なりに理解し、伝えられるように。今でも「余白」は大事にしています。

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京都・龍安寺 石庭「方丈庭園」
海外に1年間出ていたこともあってこうした日本の美をより一層美しいと感じるようになっていたと思います。




実績がなくても、機動力はある

こんなお店を始めたばかりの私たちが、作り手さんにお取引していただくことは簡単ではありませんでした。
大切に作ったものとブランドを、よくわからない人に簡単に「はいどうぞ」とはならないのは当然。

当時、自分たちにあるのは時間だけ。だからとにかく、良いと思った作り手さんの元には直接うかがっていました。会って何者かを知れば手がけている大切なものを取り扱いさせていただけるかもしれない。
車は無かったのでバイク&もちろん全て下道でした。
北陸にはよくいきました。中四国や愛知にも。
バイクで大阪から変わったやつがきた、と面白がっていただいたり、驚かれたりで、これが案外よかったのかもしれません。
得体の知れない会社との取引でも、やはり顔と顔で繋がれば人と人。覚悟と姿勢を少し信頼していただいて各地の作り手さんとお取引開始することができました。

実は10年前から現在まで、お取引が始まった作り手さんとこちらの都合でお取引を終えたことがありません。時期により多い少ないはありますが、取引先は増える一方です。
在庫も増える一方なのでその点は難しいですが、、、基本的には日本いいもの屋で商品ページやブランド紹介ページを削除することはありません。私たちはものを売っているというよりも伝えることをしているから。

当時お邪魔した作り手さんと振り返って、「昔バイクで来たよね」と笑い話をすることも、いまではいいネタになってます。

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日本いいもの屋である理由

振り返ると、こうして地道に時間をかけて足で動いて回ることに本当に意味があり、価値があったんだと実感しています。
メールや電話で簡単に済ませることができる現代で、顔でつながる関係は当たり前ではなくなってきています。zoomなどのオンラインでつながることとも違う。あまりこういうと時代錯誤かもしれませんが、オンラインは気軽につながれるけれど記憶に残らないんです。
同じ時間・空間を共有することは互いに相手の内側に何かを置いてくるような感じで、人と人として繋がることができる。

効率や生産性なんて言いますが、それでいくと恐ろしく生産性の悪い創業当初でした。でも絶対にこれがなければ今がないと思えるほど大事なことをしていたと感じています。

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なので今でも変わらず作り手さんのところに直接うかがい、お話を聞いて取材をして、ということをしています。バイクで7時間かけて北陸にいったりすることはなくなってしまいましたが…。
バイクで移動する時間は考え事が進むので、それはそれで楽しく、有意義な時間で好きでした。いまでも許されるのであればそうしたいぐらいです。

ECサイトは、ほんとに軌道に乗るまで時間がかかる。でもその期間にしっかり向き合ったことでなににも変えがたい作り手さん達との繋がりができました。
日本いいもの屋は作り手さんと繋がって、作り手さんを大切にできてこそ、その名を名乗る責任を果たせるのだと思っています。

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ブランディング事業のはじまり

最初の数年は、おそらく客観的に見るとかなり大変な時期だったと思います。
でもなぜか自分は全くそんなことを考えていなかった気がします。むしろ1番ワクワクしていた時期かもしれません。

お店が年を重ねるごとに少しづつ、本当に少しづつ軌道に乗り、2017年ぐらいからちょっとだけ「いけるかも」と思える状況になってきました。コツコツと蒔いてきた種から芽がでてくるような、そんな時期。
これぐらいの時期から作り手さんのブランドの立ち上げのお手伝いもするようになりました。

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これまでは作り手さんの作り上げたブランド・商品を紹介していましたが、職人さんや作り手さんと話していると「自社ブランドを作りたいけれどどうすればいいかわからない」ということをよく聞いていました。
そんな方に役に立てればと思い、これまでたくさんの作り手さんの取材でお聞きしてきたノウハウを、作り手さんに還元できればと、ブランディング事業も始めました。
この時につながった作り手のみなさんとも、いまでも色々な形で繋がりがあります。今でもお手伝いさせていただいているところもあれば、商品のお取引として関わり続けている作り手さんもいらっしゃいます。

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ふたたび海外に向かうために

ブランディング事業を始める少し前、経済産業省・中小企業庁から「ふるさとグローバルプロデューサー育成支援事業」という公募制の事業が出ていました。
ざっくりいうと「日本各地にある産品を掘り起こし世界に発信していく人材を育成する」事業です。
まさに当時の自分に必要なものでした。

見つけてすぐに応募して、運良く審査を通り、数ヶ月に及ぶ研修に参加させていただくことになりました。
具体的には、すでに前線で活躍している人や企業にOJT(実地研修)形式でついて回らせていただくのですが、国内だけでなく海外にも一緒に行かせていただきました。

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その時期、妻は妊娠していた時期で、妻に聞くとこの時期が1番きつかったらしいです。国内だけでなく海外までいくとは正直想像していなかったので、大変な思いをさせて申し訳なかったと思います。
その中でも子どもをみながらお店の運営業務をやってくれていて感謝しています。おそらく「自分だけ海外行って。。」と思われていたのかも。

この研修事業で得た経験と人とのつながりは今に繋がっています。実際に一緒にお仕事をすることもあれば、パートナーとして協業するようになった会社もあります。
そして「日本のいいものを世界に」というビジョンに一歩近づける重要なターニングポイントになりました。

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コロナ禍。変わらない姿勢。

そして次の大きな変化は2020年のコロナでした。
緊急事態宣言が発されて買い物に出かけるということができなくなり、必然的にECサイトでの買い物が多くなりました。
ECサイト全体が影響を受けた時期、日本いいもの屋としてはお買い物いただくお客様の層が広がった印象です。
おそらくECでのお買い物への抵抗感が全体的に下がったのでしょう。

コロナ禍当時、EC参入する企業もすごい勢いで増えました。
しかしここで、これまで積み上げてきたことが意味を持ちました。
作り手さんと直接繋がり、取材をして、商品だけでなく作り手さんやその背景を伝える、時間はかかりますがこの積み上げが他のお店との違いになった。
やはりお客様もなんとなくかもしれませんが感じていただけるとことがあるのでしょう。ブレずに作り手を伝えることをしていきて正解だったと再確認した時期でした。

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コロナが治まり日常生活が戻り数年が経ちました。
コロナは早くおさまってほしいけれど、その後お店はどう変わるかな、と考えていた当初。結果、その後もおかげさまで日本いいもの屋は少しづつ成長を続けています。

今では時間の方がなくなってしまって、製造元の職人さん達の元にうかがう回数が減ってしまっているのが懸念です。
手伝っていただく方、一緒に想いを共有してくれる仲間は少しづつ増えてきました。体制をととのえることで、もっと作り手さん達の元へ足を運ぶ機会を増やさなくてはいけません。

私たちは、会社の成長よりも日本のものづくりを伝えることに比重を置いています。迷ったときは作り手さん達の役に立てるのか?と考えるようにしています。

もちろん作り手さん達の役に立つために会社の成長が必要な面はありますが、最優先は日本のものづくりを伝えること。
これからもこのことを忘れずに日本いいもの屋は日本の素晴らしいものづくりを伝えていきたいと思います。

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日本はやっぱりいい!

GDPで日本は何位に下がったとか、円の価値が下がったとか、日本はもうダメだとか、そんなことを聞くことが増えました。

10年経った今でも変わらず「日本のものづくりってすごい」って思うことが度々あります。見えないだれかを想ったものづくり。

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『見えないだれかを想う“ものづくり”
細部にこだわり真摯に向き合う“姿勢”』


だれに言われるでもなく細部までこだわり、自分に厳しくものづくりに真摯に向き合う姿勢。もちろん日本のすべてのものづくりがそうだとは思いません。
でも、職人の手が関わるものづくりの多くは見えないだれかのこと想い、生み出され続けています。
そんな日本が本当にダメなのかな?と。

国際競争の中では人口の減少は国力の低下とつながり、数十年単位ではなかなか抗うことはできない流れがあることは確かだと思います。
でも見えない誰かのことを想える国民性や精神性というのは、クオリティの面で世界を圧倒できるレベルのものだと思っています。いわゆる伝統工芸などではない“普通のものづくり”をする方々のレベルと質が極めて高い。
すでに「量」ではなく「質」で戦う必要はありますが、使い古された言葉を使うと、本当の意味で、No.1ではなくOnly1になれるのが日本の職人のものづくりです。

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心を揺さぶるのは人の想い

私たちは日本のものづくりのブランディング事業をこんな考え方でやっています。それは、中小のものづくり企業の戦い方は広い分野ではなく、自分たちがこれまで培ってきたものが長所となる。他が真似できない分野で、時間をかけて丁寧にブランド発信をしていく。
遠回りのようでこれがいちばんの近道。働く社員も、関わる人たちも、無理なく大事なものを大事にできる。

日本も同じ状況です。
日本の強みは見えない「だれか」「なにか」のことを想う力。
たくさんのものを作ることや、次々に新しいものを作り出すことではない。
こうした日本らしい強みを丁寧に伝え、発信していくことが大切。規模を大きくすることではなく、誇りを持てる日本であって欲しいなと思います。

変わらず丁寧に人を想い、ものづくりに向き合う。
この価値は必ず今後さらに大きくなります。

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最初の方でも書きましたが、やっぱり人と人なんです。
どれだけ機械やAIが発達しても、見えない人を想うことは真似できない。人の感情を動かすことはできない。そんなふうに思います。



使い手に対しての、私たちの役割

ものづくりは使っていただく方がいてはじめて価値を持ちます。
作り手さんのことを丁寧に伝えることは、作り手に向けたものだけではなく、“使い手”に向けた価値でもあります。

使い手の方に向けての私たちの役割は、
「見えない誰かを見えるようにすること」
です。

あたりまえかもしれませんが、ものづくりには作っている人がいます。でも案外それって見えないことが多いから、思い至らないことが多い。
日本いいもの屋を介してどんな人がどんな想いで作っているのか、それを知る機会を提供できれば日本のものづくりの価値を再認識できる。そしてもっと誇りを持てる。
日本のものづくりが世界中で一層輝くような価値を持つことができるのではないでしょうか。



日本いいもの屋



10年前、ホームページの「日本いいもの屋について」で私たちの志を書きました。「日本らしい「想い」に焦点をあてたものを「日本のいいもの」として世界中へ発信しよう!」
その想いは変わることなく、10年を節目に私たちは次の段階に進みます。



これからの10年に向けて

次の10年のテーマは「つなぐ架け橋」

日本いいもの屋

これまでは私自身が各地・各人と繋がって日本いいもの屋で伝えてきました。日本だけでなく時には海外も、点々と。
それを日本いいもの屋のお客様にお伝えすることで作り手のことを知ってもらう活動をしてきましたし、今後ももちろんしていきます。
この先の10年は、この点を線や面にしていきたいと考えています。



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自社ブランドで作り手をつなぐ


MIIHINとしての自社ブランドを作ります。というかもう作っています。
まだ発表・販売は開始していませんが、近日中にご紹介ができる予定です。

自社ブランドではこれまで繋がってきた作り手さん達を繋ぎ、新たな価値を生み出せる商品を作ります。
これまでもこの作り手さんのこの技術と、あの作り手さんの手がける素材が繋がるとおもしろいな。とか考えることが多かったですが、それを実際に弊社の商品開発で商品化していきます。

作り手さんの点を線にすることで、お客様には日本のものづくりの幅を感じていただけるとともに、その可能性とおもしろさや奥行きを知っていただきたいと思っています。

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今後公開予定の自社ブランド ブランド名は「SO」

言うは易しで、実際に進めてみると商品化することの難しさを今まさに感じています。想定よりも時間がかかっていますが、もう少しでお披露目できるところまできています。

あえてここで自分に向けても書いておきますが、自社ブランドが自社のためだけのブランドになってしまうことをしてはいけないと考えています。あくまでも日本のものづくり、作り手さんのことを伝えることを最優先とすること。ここを踏み外してしまうと私たちである必要性がなくなりますので。



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日本の作り手を海外の市場につなぐ


日本のものづくりは素晴らしい。ですが、どうしても日本の市場規模は小さくなる方向にあります。これは人工の分布で今後数十年は避けがたい事実。
作り手の方達と話していると、海外への販売はしていきたいけれどそこまではなかなかできない、ということをよく聞きます。

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商社さんなどを介して、販売されているケースはあるようですが、どこまで日本のものづくりの魅力が伝わっているかは定かではありません。
日本のものは売れはする、けれど実感がないのが正直なところではないでしょうか。誰に何が喜ばれて売れているのか。まだまだ見えないことだらけ。
「ものが売れない」とよく言われる時代、様々な要因からものを買うという絶対数は減ってきている。市場が日本だけでは今後不安だと感じる作り手さんは本当に多いです。

今、私たちに求められている役割は海外への販売です。

この役割をできれば作り手さん達にまた違った価値を提供できるし、より必要とされる存在になれる。当初たてた私たちの志も海外に向けたものでした。私たちが海外への販売に力を入れて進めることは絶対に必要です。

これまでも海外販売にまだ十分対応ができていない日本いいもの屋で、海外からご購入いただくお客様がいらっしゃいました。
ですが、今後は海外の方もスムーズに違和感なく購入いただける越境ECを作ります。
もちろん色々なハードルはあるのですが、実はこれももうすでに進めておりまして、2025年にはスタートが切れると考えています。

ここでも忘れてはいけないのは、日本のものづくりを伝えること。
お店ページも私たちらしく、伝えることに重点を置きながら、少しづつ時間をかけていいものに成長させていこうと思います。



この答え合わせはまた10年後に

全く準備が整っていない創業からはじまり、はや10年。
今でも日々バタバタしていますが、あたふたすることは少なくなりました。
変わらず妻とも一緒に働いていますが、手伝ってくれる仲間も増えました。
環境や状況はかなり変わりましたが、私たちの想いは創業当初から変わっていません。

「日本らしい「想い」に焦点をあてたものを「日本のいいもの」として世界中へ発信しよう!」

これからもこの志からブレずに、日本各地に足を運び、リアルを大事に、リアルを世界中に伝えていけるように突き進んでいきたいと思います。

『日本いいもの屋』が「つなぐ架け橋」になれるように新たな挑戦を楽しみながら。そしてあたふたしながら進めていきたいと思います。



日本いいもの屋



ここまで長文にお付き合いくださいましてありがとうございました。
ここでお伝えしたことが、どのような結果になったか、改めて10年後に答え合わせをしましょう。
引き続き日本いいもの屋をどうぞよろしくお願いいたします!


日本いいもの屋

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代表 裏家健次