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三輪そうめん池利
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万葉の里、大和・三輪山にいだかれて。
今も伝える手延べの技、三輪そうめん。
かたくなに守り続けるだけが伝統ではありません。常に新しさを求めることも伝統のひとつであると考えています。
伝統を受け継ぎながら、明日の麺文化をみつめていきたいと思います。
三輪そうめん池利取材記
今回取材にお邪魔させていただいたのは三輪そうめんの製造元である池利さんです。
私たち日本いいもの屋にとって実は今回少しチャレンジなのです。これまで非食品のみを紹介してきましたので、食品を紹介するのはこれが初めて。考えてみれば当然なのですが食品も熟練の職人さんが丁寧に作り上げているもの。やはりに日本には素晴らしい食品も沢山あります。
これからは日本いいもの屋のコンセプトである「日本の本当に良いものを、背景やストーリーを含めて丁寧に紹介する」という点は引き続き大切にしつつ、少し視野を広げて食品なども含めて沢山のいいものを紹介していければと思います。
すいません少し話が逸れてしまいましたが、今回は奈良県の「三輪」で丁寧に“手延べ”そうめんづくりをされている池利さんをご紹介いたします。“手延べ”という点が池利のそうめんの大切なポイント、詳しくは後半にご説明しますね。
取材では工場長の平山さんと企画室の松長さんに工場をご案内いただき、とても丁寧に製造工程や背景をご説明いただきました。まずは池利のそうめんの背景についてのご紹介です。
工場長(左)と松長さん(右)の写真
パワースポットならぬ、パワーフード“三輪そうめん”?!
現代では様々な形で食されることが多くなった「麺」ですが、実はこの麺食のルーツはそうめんにあります。そしてさらにそうめんのルーツはこの三輪にあるのだそうです。
突然ですが、日本最古の神社はどこかご存知でしょうか。
私は伊勢神宮?かと思ったのですが、諸説あるようで、有力なのはこの三輪にある大神(おおみわ)神社だと言われています。最近ではパワースポットとしても訪れる方が増えた大神(おおみわ)神社ですが、その御神体は三輪山。そう「山」を奉る神社なのです。
(※大神神社にもうかがいましたが、神聖な場所のため撮影NGでしたので画像はございません。)
本殿を設けないこうした信仰形態は珍しく、神社の建物ができる前から多くの方から信仰の対象として祈りを捧げてきたということを考えると少し不思議な気持ちです。
この最古の神社で1200年ほど前、神主が飢饉で苦しむ民の救済を祈っていた際に神の啓示を賜りそうめんづくりがはじまったそうです。そしてまた毎年2月5日にはその年のそうめん相場をご神前で占う神事『卜定祭(ぼくじょうさい)』というものが行われ、日本中のそうめん関係者が大神(おおみわ)神社に集まるそうです。
そうめんにはこんなにすごい歴史背景があったのですね。知りませんでした。まさにパワースポットならぬパワーフード三輪そうめんですね。
三輪で生まれた日本のそうめん、もちろん手延べそうめんです。そしてお伊勢参り道中で訪れた人々がそうめんを絶賛し、各地に広めていったそうです。そのため手延べそうめんの産地は兵庫県(揖保乃糸)、小豆島、島原、半田(徳島)など西日本が中心です。神社、麺、手延べそうめん、すべての発祥はこの三輪の地にあったのですね。
三輪そうめんのコシの秘密
さてそうめんの歴史、麺の歴史が、三輪そうめんから始まったことは理解しました。それでは三輪から始まったそうめんは全て同じなのでしょうか?そうめんの産地は兵庫県、小豆島、島原、半田(徳島)などあるそうですが、発祥の地、パワーフードであること以外に三輪そうめんの特徴はどういったものなのでしょうか。
三輪そうめんの特徴で1番あげられるのが、そのコシです。細くてもコシが強くて歯ごたえさえある麺なのです。煮崩れしにくく、にゅうめんや炒めもの、実は様々な料理にも適しています。そのコシを左右するのは、まずひとつが小麦粉の種類です。
三輪そうめんが他の産地と違う点は使う小麦粉が準強力粉だということ。対して、他の産地は大体が中力粉。準強力粉は中力粉と比較して麺のコシを左右するグルテン量が多いそうです。だから三輪そうめんはコシがあると認識されているのですね。
産地ごとにそれぞれに特徴はあるのですが、小麦粉と同じかそれ以上にコシを左右するのは「手延べ」か「そうでないか」が。
ここで紹介している産地のそうめんは手延べが主ですが、手延べそうめんに慣れてしまえば、もう普通のそうめんにはもどれません。準強力粉を使うため、手延べそうめんの中でも三輪そうめんは特にコシがあるのですが、「手延べ」で作るそうめんはなぜコシがあるのでしょうか?ここから製造工程のご紹介になります。コシの部分に注目しながらご覧ください。
手延べに時間がかかる理由
そうめんの材料は小麦粉、塩、水、油。池利さんの作られている色撫子のようなカラフルな美しいそうめん以外は基本的にこの4種類の材料のみ。同じ材料で作りますが、なぜかコシや、食感が全く違うものになるのですね、不思議です。
それでは製造工程にうつります。まず最初に小麦粉と水と塩を混ぜ合わせた材料をそうめんとは程遠い大きな塊の生地にします。
そしてここから太く平たい生地にして次の機械へ移っていきます。
「手延べ素麺」がなぜ手延べといわれるか、それは古くはこのような全ての工程を全て手作業でしていたからです。現代ではこうした人の手作業でしかできない工程以外はどこの製造元でも機械化されていますが、昔は全て手作業だったそうです。昔の人はすごい!
そしてここから少しづつ少しづつ時間をかけて、なんども伸ばしたり、捻ったり、2本を合わせて捻ったり、沢山の工程を重ねて細〜く長〜く伸ばしていきます。
対して手延べそうめんでない普通のそうめんでは、こうした生地をそのままバサッと細〜く切ってしまって完成。手間や時間はかかりませんので、大量生産に向いています。でも手延べそうめんのコシや食感は全く違います。
平たい生地を少しづつ細く丸い形状に。
一旦こうした桶にいれて少し時間おきます。
ここで「手延べだとなぜコシがうまれるのですか?」と質問したところ。
この理由を松長さんが丁寧にご説明くださいました。
例えるならばこの輪ゴムがグルテン。
大きな塊の時にはこのグルテンがゆるーく繋がっている状態。コネて、延ばして、ひねったり、2本をひとつにしたり、時間置いてみたり、そうして工程を経るうちにグルテン同士が強く繋がり、沢山のこうした輪ゴムのようなグルテンの繋がりが増えていきます。
手延べではない、普通のそうめんはこのグルテンが繋がっていても、延ばすことではなく切って仕上げるので繋がりをバサッときってしまうことになるんです。素麺が手延べに比べてのびてしまいやすく、締まりなくゆるく感じるのはこれが理由です。断面があるので水分も吸収しやすいそうです。
またグルテンの結合には時間がかかるので最初から一気に延ばしてしまおうとすると切れてしまう、けれど時間を置きつつ少しづつであれば切れることなく細く長く仕上げることができます。つまり全部の工程に理由があって、製造に時間がかかるのにも美味しくいただくための理由があるのですね。
何度も延ばす。
さて引き続き生地を延ばす工程です。
先ほどの桶でしばらくおいた生地2本を1本につなげながら延ばしていきます。
延ばした生地はもういちど桶で保管、またしばらくおきます。このしばらくおく時間がなければグルテンはつながらず延ばすこともできないのです、急ぐことはできません、丁寧に進めないと手延べそうめんはできません。
そしてまたもう一段細く延ばすべく、別の工程へ。この工程ではひねりながらのばしています。
ここで延ばしたあとには油を塗ってまたしばらくおきます。この油はくっついてしまうのを防ぐとともに風味づけにもなるそうです。少しづつそうめんに近づいてきました。
まだまだ延ばします。
さて、ここらからは細く少しづつ繊細になってきますので、人の手がたくさんかかってきます。
次に織機工場のような機械がたくさんある場所へ。
ここでは職人さんが手で調整しつつ、ひねりを加えて延ばしていきます。
そしてこのような状態にして次の工程までしばらく寝かせます。
やっと、そうめんの細さに。
しばらくおいたあとに機械で上下からひっぱり40〜50cmぐらいまでのばします。完成が近づいてきた気がしますね。でもまだです。まだまだ細く延ばします。
お気づきかもしれませんが、取材当日中心で製造されていたのは、池利さんが得意とする彩豊かな様々な食材を生地に練りこんだそうめんでした。ですので赤っぽい色なのは。写真写りではなく本当にそういう色をしています。
やっとここで最後の延ばす工程にたどり着きました。ここではそうめんの細さになるまで170cm程まで一気にのばします。
最初の塊がここまで細く長くなってしまう不思議。工程の中で時間とともにグルテンがしっかり結びつき簡単には切れなくなったということですね。
でもこれで完成というわけではありません。ここから何時間もかけて乾燥させていきます。
仕上げまで職人技
何時間も乾燥させ、次の仕上げの仕事ができるのは翌朝です。この乾燥の工程は繁忙期には工場がいっぱいになるほどそうめんで埋め尽くされます。そうめんのカーテンとても美しい光景です。
乾燥もただ乾燥させておくだけでなく、度々チェックしながら。
それにしても光がかかるそうめんのカーテンは芸術的にすら感じます。おいしいそうめんは美しい。
乾燥したそうめんは長さを揃えてカットして検品。この検品がまた美しい職人技。束を持ちバッと広げて、短いものや商品レベルに達しないものをチェックして抜きます。束を広げる技と一瞬でダメな数本を見極める技、みていて楽しい職人の技ですね。
検品が終われば完成。これでやっと商品として出荷できます。
いかがでしたでしょうか。私は想像以上に時間と手間がかかるんだな、と改めてそうめんの奥深さを感じました。気候や湿度でも材料の調整が必要で、長年の経験と勘が必要な世界。これから手延べそうめんをいただくときには少し違う気持ちで食べることになりそうです。
これは工場の入り口にあった賞状。実は製麺技能士という国家資格があるそうです、代々工場長はみなさん製麺技能士。国が認めたそうめん作りです。
何より大切なことが徹底されている
大変丁寧に工場のご案内いただき、取材をさせていただきひとつ気づいたことがありました。
「工場が、機械が、とにかく清潔にされている」
食品工場だから当然でしょ、と言えばそれまでですが。このあたりまえのことをあたりまえにあることがとても尊く感じました。これが良い品、ものづくりにつながるのですね。
池利の皆様、当店の取材に快くご対応いただきまして有難うございました!
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「色撫子(いろなでしこ)」
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