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SHINTO TOWEL / 神藤タオル
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創業100余年の技術力を生かし、新しい発想力を磨いていく。
泉州タオルの特長である「後ざらし」が生み出す高い吸水性、優しい肌触り、おろしたての清潔さを追求しています。
泉州タオルの技法を継承しつつ「本当にいいタオルとは何か」を求め続け、伝統と実績が培ってきた技術力を生かし、時代の変化に呼応した発想力が必要です。
SHINTO TOWELは、素材や機能、デザインなどさまざまな角度から製品を見つめ、新しいものづくりにチャレンジしていきます。
SHINTO TOWEL / 神藤タオル取材記
大阪の南西部に位置する、泉州地区。
日本で一番最初にタオル作りが始まった『タオル産業発祥の地』に、老舗の神藤タオル株式会社さんがあります。
案内してくれたのは、代表取締役の神藤貴志さんです。
1907年に創業して以来、伝統的な手法で泉州タオルを作り続けながら、その技術を生かして2017年から自社ブランド『SHINTO TOWEL』を立ち上げました。
一度触れると忘れられない、優しい肌ざわり。
シンプルなのに、どこか目を引くデザイン。
今回は、『SHINTO TOWEL』誕生の経緯を中心に、伝統を継承していく難しさや、そこに隠された熱い想いなどをお伝えしていきます。
タオルの二大産地『今治』と『泉州』
日本のタオルといえば、愛媛の今治と大阪の泉州が二大産地と言われています。それぞれの地域で作られるのが今治タオルと、泉州タオルです。
では、このふたつのタオルに、どういった違いがあるのでしょうか。
「泉州タオルは、『白』が多くてデザイン性は乏しいけれど、肌ざわりや吸水性が高い。今治タオルは、ジャガード機械による多彩な織り柄が得意で、デザイン性が高い。それぞれ違った特徴があるんです」と神藤さんが教えてくれました。
ところが、全国的な認知度は圧倒的に今治タオルが高く、泉州タオルは少し遅れをとっているようにみえます。
「今治タオルさんはマーケティングやPR戦略が本当に上手で…。そこは泉州タオル全体の反省点でもありますね」
しかし現在は、単純に今治タオルや泉州タオルといった『地域ブランド』をおしていくだけでは、うまくいかないのだそう。
地域ブランド特有の難しさ
例えば、認知度が高い今治タオルさんの場合でも、『今治タオル』という名前だけですでに似たような商品が数多く販売されています。
だからこそ自社ならではの特色がないと、生き残るのが難しくなっているそうです。
「今、僕らのような若手は、どちらかというと自社ブランドをおしていって、結果として泉州タオル全体が盛り上がったり、活性化するといいよね、という流れで考えています」
地域ブランドが認知されれば、そこがゴールというわけでもない。地域ブランドだからこそ、ぶつかる壁があるようです。
はじまりは、デザイン会社との出会いから
そんな状況の中、神藤さんが立ち上げたのが『SHINTO TOWEL』という自社ブランド。
「自社ブランドだからといって、僕自身が全部作りあげているわけではないんですよ。デザイン・アートディレクションの部分は、大阪のデザイン事務所さんと組んでやっています」と神藤さん。
もともとは10年くらい前に、関西の企業とクリエイターがいっしょになって取り組むプロジェクトで、今のデザイン事務所さんに声を掛けてもらったのがはじまり。
イベントに出品する商品を作るために、2.5重ガーゼタオルのサンプル生地を渡したら、現在のタグ付きのデザインがあがってきたそうです。
「すごく衝撃的でしたね。めちゃくちゃかっこいいな!って(笑)」
しかし、その当時はまだプロジェクト用に作っただけで、商品を継続するつもりはありませんでした。
人と人の縁がつながって
その後、神藤さんが代表取締役に就任し、自社ブランドを作りたいと漠然と考え始めたときに、先輩から『大阪商品計画』という大阪府の支援事業を教えてもらったそう。
「その支援事業のアドバイザーの中に、以前お世話になった人が偶然いらっしゃったんです。その人にマーケティングのアドバイスをもらいながら、デザインも今のデザイン事務所に頼みました」
「どこの誰か分からない人とスタートするわけじゃなかったので、ラッキーでしたね(笑)すごく巡り合わせがよくて、今でも自分の人生で一番うまくいった瞬間だと思っています(笑)」
自社の技術力を生かした商品と、確かなデザイン力、的確なマーケティングと支援。すべてが奇跡的に重なって『SHINTO TOWEL』が誕生しました。
作り手さんの取材をさせていただいていると、神藤さんのように運とか縁に恵まれて・・と言われる方が多いです。でもやっぱり“それ”を運とか縁に感じれる基礎がないとめぐってこない。熱量を持って動く神藤さんだからこその奇跡で生まれたブランドですね。
それぞれ魅力ある、3種類のタオル生地
『SHINTO TOWEL』は、「インナーパイル」「2.5重ガーゼ」「ユキネ」という3種類の商品を展開しています。それぞれの特徴をみていきましょう。
■インナーパイル
ガーゼ生地のあいだにパイルを挟みこんだ、特殊な構造のタオルです。シャットル機という昔ながらの機械を使って、丁寧に織りあげています。
やわらかくて軽いガーゼに、ふわっとしたパイルのボリューム感が加わって、思わず頬ずりしたくなる肌ざわりに。
タオルとしてはもちろん、枕カバーやブランケットにもおすすめです。
■2.5重ガーゼ
通常3重ガーゼといえば、同じ密度のガーゼを3枚重ねて作りますが、このタオルは真ん中の生地だけ糸の密度をあえて粗くして、3層のなかにゆるい遊びを作っています。そのおかげで、ペタッと平たくなりがちなガーゼも、やわらかく表情ゆたかに。
タテ糸とヨコ糸で微妙に色差をつけているので、一口にネイビーと言っても普通のネイビーとは違い、奥行きと立体感があります。
かさばらず、ごわつかず、速乾性に優れているので使い心地も抜群。
■ユキネ
手で握ったときにキュキュとする、不思議なタオル。まるで新雪を踏みしめるような感触があり、初めて握るとびっくりしてしまいます。
その秘密は「後ざらし」という加工方法にあります。天然の油分や不純物、のりを洗い落とすさらし加工を、タオルの形に織りあげたあとに行う、泉州タオル独特の技法です。ユキネはその加工に、通常の倍ほどの時間と手間をかけています。
吸水性が最大限に引き出された状態なので、買ってすぐ使っても、驚くほど水を吸うのが特徴です。
突き詰めた、究極の形
「僕の中では、3種類とも"タオルとしての究極系”という想いで作っています」と神藤さん。
「インナーパイル」と「2.5重ガーゼ」は、織りの技術と構造の特殊さを突き詰めたもの。
「ユキネ」は後ざらしの機能性と泉州タオルらしさを突き詰めたもの。
どれも神藤タオルにしか作れない、まさに究極のタオルです。
「タオルはタオルなんですけど、使い方を限定せずに使ってほしいですね。例えばアウトドアに1枚持っていったら、寒いときに羽織れるし、何かこぼしたときにはサッと拭ける。そういう風に自由に使ってもらいたいです」
『SHINTO TOWEL』が生まれる現場
ここからは、実際にタオルの製造現場をお届けします。
神藤タオルでは、3世代の機械が現役で稼働中。
まずは、最新の機械から。こちらは完全にコンピューター制御されており、空気圧でヨコ糸を飛ばして織りあげます。
スピードが早すぎて、素人にはどんな動きをしているのかはっきり見えません…。
こちらが、タオルを織る設計図になります。すべてデータで管理しているそう。
次は、先ほどの最新の機械より、ひと世代前の機械です。レピアと呼ばれる棒でヨコ糸を受け渡しして、織りあげているそうです。
こちらが設計図。プラスチックの板に穴があいたものです。先ほどの最新の機械と比べると、アナログな感じですね。
ちなみに、こちらのタイプライターのような機械を使って、ひとつひとつ穴をあけて作ります。想像以上に、地道な作業でびっくり!
そしてこちらが、昭和57年製の一番古い機械になります。現役で動いているのは珍しいそうです。神藤タオルではインナーパイル専用に、改造して使っています。
シャットルと呼ばれる道具を使って、ヨコ糸を飛ばします。とても大きな音がして、迫力満点!
木製の細長い板が連なったものが、設計図になります。パーツもいろいろむき出しですが、その武骨な感じがなんだかカッコ良く見えますね。
この機械は現在8台ありますが、古くて部品も廃番になっており、壊れてしまったらそれでおしまいなんだとか…。
「できる修繕やメンテナンスは全部自分たちでやっていますが、正直どこまでできるか分からないですね。僕たちにはモノづくりを継承していく使命があるので、新しい機械でインナーパイルが作れないか、いろいろ試行錯誤しているところです」
技術があって、機械がある神藤タオルさんだからこそ、今の『SHINTO TOWEL』を作ることができたんだと思うと、なんだか運命的に感じますね。
こちらはタオルの縫製をするところ。『SHINTO TOWEL』のデザインの要であるタグも、ここでひとつひとつ手縫いされています。
最近はインスタなどのSNSを通して、海外との取引も増えてきているそうです。日本のモノづくりの素晴らしさが、どんどん広がっていくのは嬉しいですね。
神藤さんとお話をしていると、まわりの人を信頼して任せたり、いいものをいいと認めたりする、柔軟な姿勢とフットワークの軽さを感じました。
「僕はセンスがないので・・」と話される神藤さん、でも実はそんなことはないと私は思っています。デザイナーさんにデザインをしてもらったところで、最終的に判断するのは神藤さんです。
これまでにない、タオル業界にとって画期的な『SHINTO TOWEL』のタグ。前例の無いものをシンプルにかっこいいな!と感じ採用できる感性は間違いなくセンスです。
多くの素晴らしいブランド・職人さんの取材をしていて感じるのですが、なぜかみなさんとても謙虚!
ご自身のものづくりに関して話される時はすごい熱量なのに、人に任せたり信頼したりすることが上手。そんな人のまわりにはまた人が集まり、自然と素敵なブランドに育っていくのかもしれません。
100年以上の伝統を継承し守りながらも、人と協力しながら新たな価値を生み出していく。そんな神藤さんだからこそ、こんな素敵なタオルを生み出すことができたんですね。
長時間にわたる取材にご協力いただき、ありがとうございました!
SHINTO TOWELの商品一覧
2.5重ガーゼタオル
インナーパイルタオル
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