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BAGWORKS | バッグワークス
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「世界で一番ちゃんとしたかばん屋さん」になることを目指して
日本一のカバン産地である兵庫県豊岡市で1954年に創業。“しごとのかばん”をコンセプトにしたファクトリーブランド「BAGWORKS バッグワークス」を展開しています
いろいろな職業の人が使っている、丈夫で機能的な業務用バッグをモデルに、丈夫で機能的それでいて日常に使える「しごとのかばん」を作り出していきます。
BAGWORKS / バッグワークス 取材記
日本における4代鞄産地のひとつ「兵庫県豊岡市」。兵庫県北部は都会の活気ある雰囲気とは掛け離れ、豊岡市内には1300年以上の歴史を持つ城崎温泉があったり、1年を通して豊かな自然を楽しめる土地です。
鞄生産の7割を誇る豊岡市。創業1954年のBAGWORKS株式会社では”しごとかばん”をコンセプトとし、洗練されたアイデア力で多くの鞄製品を展開しています。
今回は代表の高島さんに、これまでの歴史や商品開発のエピソード、さらに普段聞けないお話を伺いしました。
社会の揺れに左右されない自社ブランドづくり
「豊岡というのは、もともとビジネス用の紳士服の産地だったんです。たとえば、箱物と言われるアタッシュケースやトランクなど、中に芯材が入った鞄が作られていました。徐々に、女性用の商品が増え、革を使用することも増え、質も向上しましたね」と高島さん。
こちらは豊岡が鞄の産地になったきっかけとなった「柳ごおり」
出典:豊岡市フォトライブラリー https://www5.city.toyooka.lg.jp/
昔の素材はビニールやナイロンを中心とした素材だったとか。さまざまな事を乗り越えて地場産業として成長し現在に辿り着いた豊岡市ですが、バッグワークスの歩みは海の波のように穏やかなものではありませんでした。
「創業から10年間は一般的な鞄を生産していたんですが、バブル崩壊後は取引先は中国製に頼るようになりまして。当時は売上が立たなくなり困りました。その頃インターネットの全盛期でネット販売の記事を新聞で読んだことがきっかけで、勉強をしてホームページも作ったりなんかして」
その後、新たに業務用の鞄を依頼されるようになり少しづつ売上を取り戻していきました。しかしそれはつかの間の喜びだったのです。
「次は2009年のリーマンショックが起きて、また売上がペケポンになったわけです。業務用だと企業の経済環境によって鞄の需要が左右されてしまう。より一般の方に好まれる製品づくりをするべきかなと思うようになりました」
バブル崩壊とリーマンショックの大きな経験から、製品づくりの方向性を見直すようになった高島さんは、自社ブランドを持つことに興味を持ち始め、同業種の勉強会に参加し始めました。
同じタイミングでコンサルティング会社に依頼されましたが、期待通りの結果には恵まれず「良い方はいらっしゃらないのかな」と諦めていたちょうどその時に現在も協働されている企業のコンサルティングを受ける機会に恵まれたそうです。
周りの声に耳を傾けた0からの始まり
担当の方からは「鞄を作っているのだから、業務用の鞄をモチーフにした鞄ブランドを展開してはどうですか?」とアドバイスを受けた高島さん。
『それならできるかもしれない』。そんな想いが芽生え、これまでのノウハウを活かし生まれたのが、待望のファクトリーブランド「BAGWORKS (バッグワークス)」です。
バブル崩壊・リーマンショックを経験されましたが、柔軟に対応された高島さん。人が新しい視点を素直に受け入れるのは簡単なことではありません。そんな対応力の秘訣をお聞きしました。
「植物が隙間を縫って生えるように、適者生存です」お互い経営者同士で、譲れない部分もあったはず。
高島さんは「すんなりと意見を受け入れられない人も正直いた」と、うなずき「ゼロのような気持ちで(コンサルティングの方の)話を聞きました。なおかつ、理論が素直で腑に落ちたんですよ」と語ってくださいました。
職人として時代の流れに沿っていくには、時には他の意見に耳を傾けることも大切だと気づかれていらっしゃったようです。
「これまでは軸のようなストーリー性があるものではなかったので、芯がなくどちらに行けばいいのかわからなかった。なおかつ田舎なので、おしゃれなものを作るわけにはいかない。自分達だけでは、方向が見えないのできっちりとしたブランディングが必要だと気づきました」
そんなバッグワークスの商品の名前は、ひとつひとつ職業にちなんで名づけられたものです。しっかりした生地と唯一無二のデザイン、そして耐久性は高島さんが培った経験そのもの。
「日本いいもの屋」が厳選した鞄
日本いいもの屋では、とりわけ実用的にご使用いただけるように、選りすぐりの3つをセレクトさせていただきました。
◆バイシクルマン2
自転車のロードレースで補給食や飲料などを入れるための鞄を現代風にアレンジ。フランス語で鞄を意味するサコッシュ(Sacoche)をモチーフに作ったショルダーバッグ。
◆ドクターマンSD
診療で家へ訪問する際、持ち物の多いお医者さんが多用するバッグ。欧米では、ドクターズバッグと呼ばれ、大きく広い口が特徴。これなら、お医者さんも助かりますね!
◆ボーイスカウトマン2
アメリカのボーイスカウトの少年たちが使用していたリュックを、街で使用できるようリデザインされたもの。中の物も取り出しやすく、正面とサイドに大きなポケットつきです。
想像をかきたてられるユニークな発想力。これまでのノウハウを活かせるだけでなくバッグのアイデアが面白く実用的で便利、なのにおしゃれ。鞄のストーリーを伺うと想像が膨らみ大切に使いたくなる。人々はその背景に魅力を感じているのかもしれません。
また鞄だけではなく、バッグワークスで働く「人」の面にも変化がありました。
若手からの刺激と課題
「若手の存在は刺激となり、商品づくりに活かされていると思う」
これまで高島さんが表に出ることが多かったのですが、最近の展示会では若い方が出席するなど、小さな変化がありました。人を育てる意識を持ったことで製品づくりの刺激になったようです。
一方、”後継者育成”の問題に直面。
「私も後継者が必要な年齢になってきましたから、(後継者)を抜擢したかったのですが、(人材育成)に失敗してしまって」
会社の想いも一緒に受け継ぐ必要があるため、そう簡単にはいかない様子でした。
※職人さんが鞄を仕上げられる様子
また製品開発で難しいと感じたエピソードも語ってくださいました。
「私たちは、(製造を熟知していても)問屋業に関してはわかりません。地元にはたくさんのメーカーがあり、色々な人が携わっていて色んな情報や要望が入ってくる。肝心なテイストを調べるには(鞄の特徴を知るために)聞かないといけないですから」
企画・製造において、たびたび歯がゆさを感じられることもあったようです。さらにものづくりは「産地」というものが大きな影響を与えます。
「今はないけど、(新しいことを始めると)邪魔をするような雰囲気もありました。だけど各社が自由になり、豊岡の鞄が広がり東京の企業と繋がりはじめ、共同で行うこともある」と、同じ産地同士で協力し商売をしていると教えてくださいました。
昔はメーカーが直接企業と取引があると問屋との関係性に影響し、総スカンを受けるような状態になることもしばしばだったと。時代が変わり海の石がまるくなるように、人間の角もまるくなってきたのかもしれません。
高島さんは自社ブランドの展開だけでなく、OEMに近いかたちで企業の業務用として製造し納品もされていらっしゃいます。働く人が業務用で使う鞄がバッグワークスであったり、日常使いで使用していたり、垣根なくバッグワークスの鞄が広がっているのがわかりました。
頭をひねって生み出したアイデア
ここからは、赤い扉を開けて工房にお邪魔させていただきました。
中では職人さんたちが集中してバッグワークスのバッグを丁寧に縫製されています。
最も興味深かったのはこの工場の2階部分にある、倉庫。ここには歴史を振り返るように、過去に作られた鞄が並びます。山住みになった型紙。廃盤になったものも含めると、すごい量です。
業務用と自社ブランド両方があるので、もの凄い数です。「とにかく商品開発が大変で・・・」と何度も口にする、高島さん。
ユニークなアイデアは、ポーランド・チェコ・スロバキア・ハンガリーなど東欧を参考にしていらっしゃいます。
「ちょっと、ダサカワイイというのかな。こうやってコラージュにして壁に飾っているんです。デザインは派手さはないが、機能面が良い」と。デザインの方向性を決めるような、コンパスのような存在のコラージュもまた一つ一つ手作業で作られたものです。
※東欧をイメージしたコラージュ
次に見せてくれたのが参考にした実際の鞄達。バッグワークスの鞄の半分は、実在した仕事かばん。残りの半分は「ひねって編み出したものです」と高島さん。今回は参考にして作った2種類のモデルを見せていただきました。
①ボーイスカウトマンのモデルになった鞄
1番人気のあるボーイスカウトマンのモデルになったものです。かなりの年季を感じますが、しっかりとした生地と色味がビンデージっぽい。くたっとした生地も味わい深く感じます。
とても実用的なサイズ感で、目を付けられたことに納得です。
②ボーリングマンのモデルになった鞄
次に見せてくださったのは、ボーリングの玉を入れるために使用していた鞄。きちんと中にボーリングの玉が入るような作りになっています。中には玉が収まるような仕掛けに。取材中このアイデア力に感心し、面白いと何回連発したかわかりません。とにかくアイデア力が素晴らしい!
※中にはボールが入るように工夫されています
高島さんは、工房を案内くださる中「生地やパーツなど材料が揃うことが豊岡のつよみです」と教えてくださいました。ロゴや鞄に適したパーツがすぐ手に入るため、特殊な鞄の注文も入るのだとか。
コロナで売上が半分以下に落ちたときもあったそうですが、新しい視点を活かし職人さんと共に新アイテムを定期的に生み出してこられたのでした。
柔軟にかたちを変え続ける
今年67歳の高島さんは57歳で自社ブランドを設立。器用な手先とアイデア力、そして探究心でカタログもイラストレーターを使用しご自身で作られていらっしゃいます。
今でも商品開発のために勉強を続ける高島さん。「SDGsなど社会活動や環境のことにも力を入れなくてはと思っている」と今後の展望を明かしてくださいました。
日本では多くの企業は、1年で約3割、3〜5年で4〜6割が廃業に追い込まれる厳しい世の中。自社ブランドの展開、人の意見をすんなり受け止め若手にバトンを渡す高島さんの持つ「物腰の柔らかい話し方と人柄の良さ」に魅力を感じます。その人間力こそが、時代の流れに乗る秘訣なのかもしれません。
今回の取材で豊岡の伝統が続くように時代の流れに、順応し素直に受け入れることの大切さに気づかされました。
お話を伺ったあとで、入口の前でにっこりと微笑む高島さん。たとえ状況が変わっても、柔軟にかたちを変えて次の世代に受け継がれていくのでしょう。
バッグワークスの挑戦はまだまだ始まったばかり。次のものづくりのチャプターはどんな物語なのか、何が起きるのか、何を見せてくれるのか。次の新しい展開をお聞きするするのがたのしみです。
高島さん、ご協力いただきありがとうございました!
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BOYSCUTSMAN 2
ボーイスカウトマン 2
DOCTORMAN SD
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