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オークヴィレッジ
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国産の木材を余すことなく使い切る。「木の文化」を生活の中に取り入れ「森と共生する暮らし」をテーマに、1974年受注生産の家具工房として創業しました。
子供の頃から国産の無垢材を使った家具やおもちゃに触れることで、森とつながる暮らしを楽しんでいただければと考えています。
そうした想いはさまざまな家具や暮らしの木製品へと広がり、オークヴィレッジならではの住空間の提案にもつながっています。
オークヴィレッジ取材記
岐阜県の北部に位置する飛騨高山は、90%以上の林野率(土地の総面積に対する林野面積の割合)を誇る、自然資源が豊かな地域です。
今回は、そんな飛騨高山の里山に工房を構える「オークヴィレッジ」にお邪魔しました。敷地内は深い緑の森に囲まれ、清らかなせせらぎが流れ込み・・・まさに自然とともに歩む“理想郷”のような場所です。
お話をお伺いしたのは、営業の森下さん(左)と工場長の小木曽さん(右)です。
オークヴィレッジは、国産の木材を使用して家具や木工品といったものづくりに取り組む工房です。日本いいもの屋では、子どものおもちゃを中心に取り扱っています。
今回の取材では、オークヴィレッジを立ち上げた経緯から、ものづくりに込められた想いまで、たっぷりお伺いしました。
創業者は、熱い想いを持った若者たち
オークヴィレッジが飛騨高山の地に創業したのは、1974年。立ち上げたのは、東京から移住してきた5人の若者たちです。
彼らは、いわゆる団塊の世代。大学を卒業したあとは大手企業に就職するのが普通と考えられていた時代ですが、彼らはそれまでまったく関りのなかった木工の世界へ飛び込みます。
「創業者はみんな、“へそまがり”だったんでしょうね(笑)。時代に流された一般的な道ではなく、自分たちの『想い』が実現できる道を選んだんです」
創業メンバー全員を突き動かした『想い』。それは、『自然との共生を目指し、循環型社会を作る』というものでした。
「同業の工房さんは『家具を作りたい』というところから始まっているんでしょうけど、私たちは違います。『循環型社会を作りたい』という創業者たちの想いが、ベースにあるんです」
サステナビリティが大きく叫ばれる現在では、「循環型社会」という言葉もよく聞くようになりました。しかし、オークヴィレッジが創業した当時は大量生産・大量消費がもてはやされた時代。地球環境を顧みる企業など、ほとんどありません。
そんななかでいち早く日本の森林資源に注目し、未来を見据えて動いた5人の若者たちは、まさに先見の明があったと言えるでしょう。映画や小説になりそうな、ドラマティックな創業秘話に驚きました。
オークヴィレッジを支える、3つの理念
では、循環型社会を実現するため具体的にどう動いていったのでしょうか。
「彼らはまず、石油資源だけに依存することをやめ、木を『植えて、育てて、切って、使う』というサイクルを適切にまわそうと考えました」
その想いは、オークヴィレッジの3つの理念として今もしっかりと受け継がれています。ここでその理念をご紹介しましょう。
【1】 100年かかって育った木は、100年使えるものに
1本の木が育つまでには、50年、100年という長い年月がかかります。そんな大切な木を使うからには、それ相応の、長い年月使える家具を作ろうという考え方です。
【2】 お椀から建物まで
毎日使うお椀から、生活する建物まで。暮らしのさまざまな場面で木を使う提案を行います。
【3】 子ども一人、ドングリ一粒
オークヴィレッジの『オーク』とは、『ナラ』の木のこと。実はこの木、私たちにとって馴染みのあるドングリをつけるんです。
1本の木を使ったら、1粒のドングリを植えて苗を育て、それを山に植樹し、次の世代に木を残していこうという考え方です。
たとえ、時代の流れに逆行しても
大きな希望を胸に、縁のあった飛騨高山で始動したオークヴィレッジ。ところが、なにもかも順風満帆というわけにはいきませんでした。
「100年使える家具というコンセプトで動き出したとき、やっぱり他の家具メーカーさんからは、『お前たちアホか』と言われました。『100年使える家具なんて作ったら、ほかの商品が売れなくなるじゃないか』と…」
高度経済成長の頃、家具は「作れば売れる」時代でした。そのため、商品のライフサイクルが短いもの、流行り廃りがあるものをあえて世に出し、壊れるか、飽きさせるかして次を売る、という動きが主流だったのです。
「そういうサイクルに反旗を翻したわけなので。まぁ、時代の『裏』をいってますよね(笑)」
しかし、そんな時代も今や終焉を迎えました。
「今は逆に、どこの家具メーカーでも環境のメッセージをアピールしないと物が売れなくなりました。そういう意味で、やっと時代が追いついてきたのかなと思います」と語る小木曽さん。
国産材を、有効活用したい
オークヴィレッジの社名にもなっているオークですが、もともと日本では、ものづくりにあまり使われない木材でした。
オークのような広葉樹は、9割がパルプ(紙)になります。しかし知識や技術があれば、たとえ広葉樹でも、家具や木工品を作ることはできるのです。
「このままパルプだけに使うのはもったいない。日本の広葉樹をもっと有効活用しようと考え、うちは創業当初から一貫して国産の広葉樹を生かしたものづくりをしています」と語る小木曽さん。
鍵となるのは、自社で抱える職人たち
広葉樹を有効活用するためには、材料を見極めて、それを実際に形にしていく職人が重要になってきます。
「うちは問屋を通さず、職人が直接、山へ赴くんですよ。そうして木の性質やクセを見極め、『この部材はここに使える』という“適材適所”を判断していくんです」
例えるなら、飛騨牛を一頭買いするイメージだそう。肩ロースのようないい部位だけを使うのではなく、テールもタンも工夫して使って、おいしい料理を作っていく。
オークヴィレッジでいうと、イスやテーブルといった家具だけでなく、適材適所を考えながら小物まで手掛けることで、木材をすべて無駄なく活用していきます。
また、今の国産材は昔と比べて細い木が多いため、物を作る際にも木目や色を合わせたりといった作業が必要となり、通常よりひと手間もふた手間もかかってしまいます。
「うちの職人たちは、そういう手間を惜しまずやってくれるんですよ。しかも、ひとりひとりがやり方を工夫して、こだわってやってくださる。本当にありがたいです」
職人として「ものづくりができる」というのはもちろんのこと、その一段、二段、上の意識を持っている。言葉にすると簡単なようですが、なかなか難しいことだと思います。
木の特性を生かしたものづくり
100年使えるものづくりを実践するため、オークヴィレッジでは独自の工夫を行っています。そのひとつが塗料です。
木の呼吸を妨げない「植物性オイル」を使い、自社で「漆塗り」も行います。塗り直しやメンテナンスが可能なので、商品と長く付き合っていくことができます。(※小さな子ども向けおもちゃは無塗装で仕上げています)
また、オークヴィレッジの家具は耐久性を最大限に引き出すため、伝統工法である「木組み」を用いています。これは、ビスや金具をなるべく使わず、木に切り込みを入れて木と木を組み合わせていく工法のこと。
「木の特性を殺すことなく、昔からのやり方でものづくりをしています」と語る小木曽さん。創業者たちの精神が、ここにも深く息づいていますね。
こだわりが詰まった現場へ
ここからは、実際にものづくりの現場を見ていきましょう。
まずは、チェアや小物を作っている工場にお邪魔しました。
当店でも取り扱っている「海のいきものつみき」「森のどうぶつつみき」を制作中。木の板がみるみるうちに、かわいい動物の形に生まれ変わっていきます。
こちらは「森の合唱団」の木琴を作っているところ。小さなお子様が触っても痛くないよう、鍵盤一本一本に丁寧にやすりをかけて仕上げます。
木琴の外枠にも、木組みの手法が用いられていますね。
こちらの低座のイスも木組みです。意識して見ないと分からないところに、こだわりの技がさりげなく使われています。
私も今までいろいろな工場を見学させてもらいましたが、特にオークヴィレッジの工場はきちんと整理整頓が行き届いているのに驚きました。
「せっかく良い物を作っていても、現場が危険だとやっぱり商品に出てしまうと思うので。そこは気を付けてやっています」
工場の壁には、歴代の職人が使ってきたのこぎりがズラリ。オークヴィレッジの歴史を物語っていますね。
こちらは、木のお皿に植物性のオイルを塗って乾燥させているところです。植物性なのでいい香りがします。
独自に調合した植物性のオイル。これを塗った商品は使い込むほどに独特の味わいが出てくるため、自分で家具を“育てる”楽しみが味わえます。
漆を塗っている工房では、職人さんが作業しているところを見せてもらいました。丁寧に漆を塗ったあとひと晩乾かし、またその上に漆を重ねて塗るという工程を5~6回繰り返して、きれいなツヤを出していきます。
こちらはボウルに漆を塗っているところ。ちょっとマットな質感を楽しんでもらう商品なので、漆は2回塗って仕上げます。
「ムラが出ないよう手早く均一に塗らないといけないので、その調整が難しいですね」
ちなみに、おがくずも飛騨牛の牛舎に持っていってもらい有効活用しているそう。その後、牛のフンと尿が混ざったおがくずを発酵させて堆肥にし、それを今度は野菜を作る農家さんに譲ります。最終的には土に還るので、これぞまさに『循環』ですね。
理念とビジネスを両立するには
お話をお伺いすればするほど、冒頭で紹介した3つの理念が社員や職人のみなさんにしっかり行き渡っていることが伝わってきます。それが、クオリティの高いものづくりの原動力になっているのでしょう。
「がんばってやっているつもりはないんですけど(笑)もうそれが、当たり前のようになっていますね。創業者の方々がこういった理念を残してくださったことに、感謝しています」
こういう企業理念がある場合によく起こりがちなのが、理念を追求しすぎてビジネス面が後回しになってしまうこと。
オークヴィレッジの場合は、そのバランスのとり方がすごく上手だなと思います。
「そこはやはり、お客様に支えられた部分が大きいですね」と小木曽さん。
お客様とは単に『物を売ってお金をいただく』だけの関係ではなく、『理念からものづくりの背景まで丸ごと共感してもらって一生お付き合いいただく』ような関係を築いていく。
オークヴィレッジはそれが無理なくできているからこそ、理念とビジネスを両立することができるのだと思います。
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