BLANKED(ブランケッド)は、
綿繊業発祥の地「三河」で70年以上、生地づくりを行なってきた老舗メーカー
「ナカモリ」がつくる、ガーゼケットのブランドです。
ガーゼケットの土台となっているのは「三河木綿」。
室町時代から現代まで三河地域では、
精錬・染色・織・縫製、それぞれの職人が集まる繊維の町として、
織物を継承・探求し続けています。
ガーゼケットと聞くと、
どんなものをイメージするでしょう。
使い込んでもくたっとせず、
どんどんふっくらしていくブランケット。
長く使っていくうちに風合いがでて身体になじむガーゼケットが、愛知県蒲郡市にある有限会社ナカモリで企画・販売、中瀬織布合資会社にて製造されています。
2社の社長はいとこ同士なのだそう。
それぞれの役割を担い、2社で協力しながらガーゼ生地の商品を展開してこられました。
中瀬織布合資会社の代表取締役・中瀬孝充さん、有限会社ナカモリの中瀬綾乃さんと柳奈津江さんにお話を伺いました。
新しくスタートした「BLANKED」は、ガーゼケットのブランドです。
タオルケットを使っている人は多いけど、ガーゼケットという言葉は知らない人が多いのでは?
肌に優しく機能的な「ガーゼケットを広めたい」という想いでブランドが誕生したのだそうです。
BLANKEDのガーゼケットの特徴は「多重織」
「同時に重ねて織ることで空気の層ができ、通気性と保温性を兼ね備えるんです。
使っていくと良い風合いが出てきます。ふっくらして身体に馴染んでくるのが持ち味ですね。」と中瀬社長。
ガーゼと聞いて思い浮かべるのは、ベビー用品やキズの処置に使うものでしょうか。
ガーゼはキズを覆うものとあって肌に優しい生地。赤ちゃんにも安心して使えるもの。 それを寝装品に活かせないかということで、多重ガーゼケットの開発に至ったのだそうです。
天然素材を使って国産で作られるガーゼケットの品質を知ると、手放せない一枚になりそうですね。
中瀬織布合資会社と有限会社ナカモリがある愛知県蒲郡市は「三河木綿」で知られる繊維の町。
昭和10年〜30年代が織物のピークで、当時は1000軒もの機屋がありましたが、今では40軒ほどまでに減ったといいます。三河織物は今でも伝統産業として受け継がれ、昔ながらののこぎり屋根の機屋も僅かながら残っています。
中瀬織布では、初期の頃は平織りや綾織りで製造していましたが、織り機の進歩に沿ってジャガード織での製造を広げてきました。
ジャガード織とは、色や素材が異なる糸を組み合わせ、ジャガード専用の織り機に組織を読み込ませて作られる織物のこと。
柄が立体的に浮かび上がるのが特徴で、プリントされた生地と比べて高級感があります。
ジャガードのシーツやカーテン、テーブルクロスなどをメインにしていて、問屋から仕事を受注することが多かったのだそうです。
ガッチャンガッチャン…と音を鳴らせてゆっくり織る機械で生産していた時代から、スピードを上げて量産を可能とした高速織機を使う今まで海外生産に頼ることなく、国内生産で続けてこられました。
こちらが中瀬織布の工場。
織機のパーツが置かれているのを見ると、地場の空気を感じられます。
今では、天然素材を使用したガーゼ生地の製造がメインになりました。
伝統産業とはいえ、自分たち独自のやり方を見出してこられたお話を聞くと、さまざまな苦労を乗り越えてこられたことが伺えます。
蒲郡市に最盛期には1000軒くらいあった機屋が減少した背景は、海外に製造が移行したことが大きかったのだそうです。
「ものすごいスピードで、あれよあれよという間に仕事がなくなりました」と中瀬社長。
それは15年くらい前の話。 地元の問屋も仕事を中国に移行するようになり、本当にやばい!と焦りを感じる状況に陥りました。 自分たちで柄をつくって、紡織をして、ナカモリの社長と一緒に展示会に出続けたのだそうです。
「工夫をして商品を作り、見てもらう」ことの繰り返し。熱意と根気を要する挑戦だと思います。
当時、中国の工場を尋ねてみたところ、価格も人件費も安くて驚いたといいます。 中国で生産しようとは考えなかったのか伺うと、
「多重織はどうしてもキズがつきやすく、当時の中国の設備では織れなかったのです。 日本でやってきた中でも、機械を最新のものに入れ替えながら、ガーゼに適した設定をみつけてきたのでね。日本で機械をこまめに管理しながらやっていくことが必要だと思いました」と中瀬社長。
当時は
今のようにWEB会議が簡単にできるわけではなかったので、海外生産では見えない部分が出てきてしまうのではないかという心配もあったのだそう。
やはり
日本で製造する方が不安が少なく、自信をもって製品を出せるのだと思います。
MADE IN JAPANのブランドの誠実さを感じます。丁寧なものづくりが続けられてきたというこだわりが見えますね。
真似されないようなもの、自分のところでしか作れないようなものを製造したい!という想いで BtoC の事業をスタート。
まずはハンドメイド作家さんに向けてガーゼ生地を販売することからはじめ、前身となる「fuwara」というブランドを展開しました。
fuwaraの商品はギフトショーへの出展を重ねながら、販売先とのつながりを広げたのだそうです。
ギフトショーで出会う販売先は考え方が多様で、ものづくりへのこだわりに共感してもらえるお店ばかりではなかった分、どうしても安さを求められることがあったといいます。
「価格競争になったところで、どんどん価格を下げると頭打ちになるので、商品開発に力を入れています」と中瀬社長。
価格ではなく、独自の技術力と、それに合ったデザイン性のあるものを開発することで戦うことを選ばれたということですね。
そこで、もとは柄のデザインを外注していたのを、柄・織りの組織・企画を自社でつくれるよう内製化したのだそうです。
これにより試作や開発の費用を抑えることができ、より沢山の試作と開発に取り組み、高付加価値でありながら競争力をもった商品開発ができるようになりました。
良いものが作れても、その良さが伝われらなければ、過去に中国製が入ってきた時のようなことを繰り返してしまう。
これまでの経験から新たなブランドでは、
「こだわりがある商品を展開するお店に置いてほしいと思いました」
「今までに参加したことがなかったこだわりのあるお店のバイヤーが集う展示会への出展をきっかけに新しいブランドを作ったんです」
ナカモリの中瀬さんと柳さんが語ってくださいました。
そうして多重ガーゼの特徴と素晴らしさを伝えるブランド「BLANKED」がスタート。
「ブランケット/BLANKET」であるところを「ブランケッド/BLANKED」としているのは、「使い込んだ」という意味が込められています。長く使い込むごとに柔らかくなって
身体に馴染む 特別な一枚です。
初出展の展示会では、これまでに取引のなかった取引先との出会いが多くあったのだそう。
商品の価値を分かってもらえる取引先との出会いを通して、価値を丁寧に伝えるということを大切にしたブランディングに取り組まれています。
「これまでとは別の販路でも商品が展開され、新しい客層にも使ってもらえることに期待が高まりまっています」
時代に合わせていきながらも、国産で天然素材にこだわる商品づくり。 工場の様子を見せていただきました。
昔はガッチャンガッチャンと音をさせながらゆっくり織る機械を使っていましたが、今は「エアジェット」や「ウォータージェット」といった高速機を使って生地を織っています。
織り機15台をすべて高速機にしたことで、短納期への対応も可能になったのだそうです。
これがエアジェットの機械。
色鮮かな糸が高速で織られていく様子は、なかなか見られない光景です。
高速機では、毎分1000回転で生地を織ることができるんだそう。
昔ながらの機械は、毎分100回転ほどだったため、10倍ものスピードです。
BLANKEDのガーゼケットは四重織。
4枚を同時に重ねて織られたガーゼケットの断面を見せてもらいました。
間に荒目の生地をいれることで、ふわっとした空気の層ができるといいます。
このガーゼケットが、使っていくごとにふっくらした良い風合いが出てきます。
汗をしっかり吸ってくれ、通気性も保温性も高いガーゼケットが、やわらかくなって身体に馴染み、特別な一枚になります。
キズがつかないよう管理されながら、同時に重ねて織られたガーゼケット。
優しいガーゼケットの製造工程にこだわりを感じます。
塗り終わった漆器を乾燥機で焼き付けをおこない、塗装を定着させます。
最後に、検品をおこなってクリアしたものを、次の工程へと引き継いでいきます。
贈り物に、親子で同じものを使う喜びに
ガーゼケットというと、出産祝いなどで耳にすることが多いものとあって、ベビー用のものからはじまりました。「子供が使うものには肌に優しい天然素材を選びたい」という親御さんが昔から多いこともいえるでしょう。
こうした背景があって、ガーゼケットはベビー用と大人用が展開されています。
「BLANKEDのガーゼケットは、親子で同じものを使えるんです」 意外とこういう商品展開って珍しく、親御さんも喜びを感じらます。
中瀬社長も、「大人の方が使っていただいても十分喜んでいただける商品です」とお話しされていました。
今後の展開について聞くと、ニーズに合った商品を作っていきたいとのこと。
国産のガーゼケットは、しばらく使ってみて「やっぱりいいな」と思えるもの。コロナが流行る前には、海外の展示会にも参加して来られた経緯もあるのだそうです。
原材料が高騰していて、良質なものを安く提供するといったことが厳しい状況ですが、今できることに挑戦し、試行錯誤を重ねてこられました。
最近では、ガーゼケットの商品は三河で製造し、やわらかく加工する工程を愛媛県今治市でお願いするといった産地間コラボもされているんだそうです。
「地元だけでの商売では難しい時代になっているからこそ、産地間交流をしながら盛り上げていきたいですね」と中瀬社長。
ものづくりの産地同士での交流があるということを新鮮に感じました。 こだわりをもつ生産者同士が協力することで、更に良いものが作られるのだと思います。
なかなか聞くことができない貴重なお話を聞かせていただきました。長時間取材にご協力いただきありがとうございました!
ガーゼケット -BLANKED-
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