サイフク(mino・226)

minoサイフク226  ブランド紹介 雪国の冬に使われてきた「蓑」をモチーフにして生まれたブランド。
新潟の美しい四季を背景に、シンプルなデザインのニットアイテムを提案。
時代や流行に左右されず、長く愛用できる物づくりを心がけています。
minoサイフク226  ブランド紹介 「226」(つつむ)は、ヒトと暮らしをニットでつつんで、心地よくユーモアあふれる毎日へ導くことをコンセプトとしたブランドです。頭・手足・お腹など大事なカラダの一部から、インテリアなど生活を彩るプロダクトまで、すべて物を、楽しい工夫でつつみます。




サイフク(mino・226)取材記


ニットといえば、秋冬に着るセーターやカーディガンを思い浮かべる人が多いと思います。でも実はニットって、“防寒着”としての良さだけではなく、さまざまな魅力を持った素材なんです。

今回は、そんなニットの可能性を積極的に発信し続ける、ニット専門メーカー「サイフク」さんにお邪魔しました。訪れたのは、新潟県の五泉(ごせん)市です。
サイフク
五泉市は、『ニットの産地』としてアパレル業界で広く知られた存在です。サイフクは、この地で1963年から物づくりを続けてきました。
サイフク
お話をお伺いしたのは、常務取締役でブランドマネージャーの斉藤佳奈子さん(左)と、スタッフの 山木紗百合さん(右)です。

サイフクでは、2つのオリジナルブランドを手掛けています。
nico ストールポンチョ
mino nico ストールポンチョ
新潟の四季を生かして、シンプルなデザインで展開する「mino(みの)」。

サイフク
サイフク
体の一部からインテリアまで、いろいろなものをニットで包むことをコンセプトにした「226(つつむ)」。

それぞれのブランドの魅力から、知られざるニット作りの裏側まで、いろいろなお話をお伺いしてきました。この取材記を通して、みなさんのニットに対する意識が少しでも変化してくれれば嬉しいです。


時代とともに移り変わる、ニット業界
五泉市は、古くから豊富な水資源に恵まれ、繊維の町として発展してきました。着物から洋服へと時代の流れが変化するなか、五泉市も織物からニット製造へ転換していきます。

クオリティの高い商品や品質の安定性が評価され、今では、有名ブランドやデザイナーからも支持される『ニットの産地』として注目されるように。
サイフク
そんな五泉市ですが、メーカー数は時代の情勢とともに、減ってきているそう。

「物作りが、日本から中国などの海外に移行したときがあって。そのタイミングでだいぶ減りましたね。価格と量の問題もあるので…」と斉藤さん。


自社ブランド誕生のきっかけ
自社ブランドを手掛ける前のサイフクは、アパレル業者から受注して商品を製造する、いわゆるOEM生産を行っていました。しかし時代の変遷とともに、それだけだと、ニットメーカーとして一年間やっていくのが難しくなったそうです。
サイフク
一年の中でもだんだん“谷間”が多くなってきたころ、斉藤さんたちは立ち上がります。

「OEMの営業活動を頑張っても、なかなか谷間を埋められない状況でした。やっぱり『自分たちで作って、自分たちで売る』っていうことを早めに始めて、種まきした方がいいんじゃないかという話になり、自社ブランドの制作に向けて動き出したんです」


シンプルな作りの「mino」に込めた想い
最初に立ち上げたブランドが、2012年に誕生した「mino」。これはどのような経緯で作られたのでしょうか。

「アパレル業者さんと常にやり取りをしていると、すぐにセールがやってくるんですよ。『私たちは、すごく賞味期限が短いものを作っているんだな。生鮮食品みたい…』と思うことがあって。自社ブランドでは、あんまりそういうことをしたくないなぁと思ったんです」
nico ストールポンチョ
「それに、今でもOEMでたくさんのアパレル業者さんと取り引きをしているので、そこを邪魔するようなものは、作りたくなかったんですよね」と斉藤さん。

確かに「mino」は、あまり見かけないシンプルな作りで、サイズ展開もなく、流行に左右されにくい。これは、そういった考えをもとに生まれたものなんですね。


外部と協力して、より良いものに
「mino」を立ち上げる際、一緒にブランディングに携わったのが中川政七商店さんです。こういった外部の方と一緒に動くことで、サイフクとしてはどのような影響を受けたのでしょうか。

「minoって、うちの商品の中で、もっとも簡単、もっとも単純な作りなんですね。ここまで単純なもので勝負するって、自分たちだけでやったら、なかなか踏み切れないと思います」と斉藤さん。
nico ストールポンチョ
シンプル過ぎて「これで本当にいいのかな?」と不安になってしまうところを、「これでいこう!」と力強く背中を押してくれる。こういう部分は、客観的に見てくれる外部の協力があってこそ。

また、「mino」には、丸めて持ち運べるように紐が付属しているのですが、これも中川さんと話すなかで生まれたもの。お客様だけでなく、店頭で売るときにも便利なんだそう。

「中川さんは売り場を持っていらっしゃるので、店頭で実際に売っている側からの話を聞きながら作れたのは、とても良かったですね」


外部のチカラも、自分たちの糧にして
ずっとOEMを中心としてやってきたサイフクでは、「企画をする」「作った後に売る」ということが初めてで、まさにチャレンジでした。その分、いろいろ苦労もあったのでは?

「なにかをやると、常に壁にぶつかるんでね(笑)。その時に『どうしよう!?』ってなっても、なんとか乗り越える。またなにかをすると、壁にぶつかる。もう、その繰り返しですよ(笑)。その繰り返しが、大変ではあったけど、今のノウハウや体力みたいなものにつながっていると思います」と笑顔で話してくれた斉藤さん。
サイフク
「良いものを作っているから売れるはずって、作り手は思いがちですけどね。やっぱりそれを“伝える力”がないと。良いものを作って、ただ東京に並べてきました、みたいな感じだとお客様には分かってもらえないと思います」
そういう点でも、しっかりとした流通を全国に持っている中川さんと組みたいと思ったそうです。

「ブランドのスタートとしてはよかったんですけど、ただそれだけではダメなんです。もっとほかに卸す流通先をみつけるために、展示会に出るとか、ECサイトを立ち上げるとか。ひとつひとつやっていった感じです」と、力強く語ってくれた斉藤さんと山木さん。 サイフク
私も、自社ブランドを立ち上げて頑張っているメーカーさんのところによく取材にいくのですが、「自分たちでちゃんと考えて発信していこう!」と動ける人が社内にいるかいないかで、そのブランドがうまくいくかどうか、変わってくると思います。「外部の人と一緒にやるから、全部おまかせすればいいんだ」というスタンスだと、たぶん難しい。ブランドを作るって、そんな簡単なことじゃないんです。自分たちでやるっていう、意識があることが大事なんです。

「外部の方も、永遠に並走してくれるわけじゃないですし。ひとり立ちしてやっていくには、自分たちがチカラをつけていくしかないですね」


ニットのおもしろさを発信する「226」
では、2つ目のブランド「226」が誕生したのは、どのような経緯があるのでしょうか。

「minoを立ち上げてしばらくやっているうちに、minoだけでは、ニットのおもしろさが伝えきれないなぁと感じるようになったんです」と斉藤さん。

「mino」には、シンプルな作りの良さがある。でもそれとは逆に、いろいろな編み方ができたり、伸び縮みしたり。そういう部分もまた、ニットの魅力のひとつ。ただ、その部分を「mino」に入れてしまうと、ブランドの世界観が崩れてしまいます。
サイフク
「もっとニットの可能性みたいなものを表現できるブランドがほしい、と思って作ったのが226です。どちらかというと総合ブランド的な感じで、衣料だけじゃなくて、バッグとかインテリアとか、なんでもやっています」
サイフク
「226」はロゴのデザインもユニーク。「226」の下にある「3129」はサイフクの社名、「5000」は五泉市の五泉。よく見ると「210」のニットも隠れています。

「もっと自分たちを前に出したブランドにしたいっていう、想いも込めています」


ブランドを起点に、広がる輪
「226」を立ち上げてから、意外とOEM生産の方にもいい影響があったそうです。

「例えば、今までOEMではバッグみたいなものって作ってなかったんですけど、226にバッグがあることによって、ここから派生して、コラボのお誘いがきたり。イスメーカーさんとか、普段なかなか出合わないようなメーカーさんとつながれたり」
サイフク
「226」でいろんなことをやっているからこそ、さまざまな企業からお声が掛かるようになったとか。発想次第でいろいろ作れる、ブランドならではの魅力がよい結果に広がっていますね。


社内の人間だから、できること
ブランドマネージャーでもある斉藤さんは、商品のデザインも行っています。しかし、もともとデザインの経験がなかったというから驚きです。

「最初は外部のデザイナーさんにアイディアをもらったほうがいいのかなと思ったりしたんですけど…。結局はニットのことをよく分かっていて、うちの機械背景の特長をうまく生かすことが大事だったりするので。自分でうんうん悩んだほうが、スジのいいものが出る気がして」
サイフク
特にそれがよく分かる商品が、226の「見せるハラマキ」シリーズ。お腹の部分が薄くてすごく伸びる生地なのに対し、裾部分は見えても下着っぽくないよう、しっかりと厚い生地に。

「こういうデザインも、それぞれの生地を縫製してくっつけるんじゃなくて、このまま編める機械がうちにはあるんですよ。そもそもこの機械は、薄手のセーターのケーブル模様だけ厚く表現したいっていうときなんかに使ったりするんですけど。この機械のおもしろさって、なにかに使えないかなとずっと思っていたんです」

機械の特長をきちんとつかみながら、一般消費者の「腹巻は使いたいけど、腹巻として見えるのはイヤ」という心理具合も見事に汲み取った商品。これは、外部のデザイナーさんではなかなか出せないものですね。


知っているようで知らない、ニットの製造現場
さて、ここからは、実際にニットが生み出される現場にお邪魔してみましょう。
サイフク
最初は、糸を編んで編地を作る工程です。こちらはパソコンで、編地を編むためのデータを作っているところ。柄を組むのはもちろん、糸を何本で編むのか、ふわっと編むのか、ぎゅっと編むのかなど、いろいろなことを何度もチェックしながら作っていきます。
サイフク
サイフク
先ほど組んだデータをもとに、こちらの大きな編み機で編んでいきます。サイフクには、なんと80台もの編み機があるそう!
「編み機は同じように見えても、それぞれ針の太さが違うんです。針の部分をごそっと取りかえればほかの太さが編める…というわけではなく、ひとつひとつがその太さ専用の機械なんです」
それで、こんなにたくさんの編み機が必要なんですね。
サイフク
こちらは最新のホールガーメント機。縫い目のない、無縫製の商品が編めるそう。
サイフク
ここは洗いの工程を行います。大きな洗濯機と乾燥機のような機械で、水洗いやお湯洗いなどをして、風合いよく仕上げていきます。
サイフク
編み機で編んだ編地を、パターンに合わせて裁断していきます。前見頃、後ろ見頃、袖、ポケット、フードなど、それぞれのパーツごとにどんどん分けていきます。
サイフク
こちらは縫製の工程です。ミシンやロックミシンを使って、スピーディに、立体的に縫っていきます。
サイフク
普通の生地と違って、ニットを縫うのは難しそうですね。
「ニットは伸びたり縮んだりするので、縫うときはちょっと縮めながら縫って、伸びすぎないようにしています」と職人さん。
サイフク
こちらは「リンキング」と呼ばれる縫い合わせの工程です。編地のひと目ひと目を、もう一度針に刺していく、非常に細かい作業! 職人さんの手元を見ていると、思わず息をするのも忘れてしまいそう。
サイフク
リンキングではループとループを同じ針に刺して縫い合わせるので、縫い代のない仕上がりに。襟元など、伸び縮みの必要な部分によく使われます。
サイフク
こちらは仕上げの工程。縫っていると端に糸が出たりする場合があるので、それをきれいに取りのぞいたり、キズがあれば直したりしています。
サイフク
蒸気が出る台の上に置き、縫ったあとの縫いジワを整えていく工程です。金枠にセットして、指示通りの寸法を出していきます。
サイフク
最終の検品をして出荷します。襟ネームや下げ札がつき、私たちがお店でよく見る商品に。

今回はざっと駆け足で見学させてもらったのですが、商品だけ見ていると気付かないところや、作られるまでの大変さを知ることができました。リンキングなど初めて見る作業も多く、これからニットを着るときに、思わず襟元を確認してしまいそうです(笑)。


これからも、ニットの魅力を形に
最後に、これから先、めざすところについてお伺いしました。

「いろいろ作っていくなかで、やっぱりもっと気軽に洗えるようにしたいなと思っています。ニットの衣類を洗濯機で洗えるようにするには、糸や作りなど、けっこう考えないといけなくて…」と斉藤さん。

「ブランドでいえば、minoと226のブランドの差が、なくなってきちゃった部分が最近あるので。minoはもともとある、新潟の四季というコンセプトに立ち戻るようにしたいなぁと思っています」
サイフク
常に自分たちで考え、生み出していくサイフクさん。今後の課題もきっと乗り越えて、新しく、楽しいアイテムを、また私たちに届けてくれることでしょう。

長い時間、取材にご協力いただきありがとうございました。







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