clife / 宇内金属工業

Broom Craft 金属、革を使用した雑貨で心地良い日々を生み出すライフスタイルブランド。 私たちの仕事は『リラックスした日常』をテーマに、あなたの日々の暮らしをほんの少し心地良くする事。
メイドインジャパン・メイドインオオサカ。金属加工技術とレザークラフト技術、デザインの力で人々の気持ちに寄り添う製品を提案。


clife (クリフ) / 宇内金属工業 取材記


みなさんは、使えば使うほど魅力が増していく“経年変化”という言葉をご存じでしょうか。
本革や金属、木材、デニム生地などをイメージしていただくと分かりやすいと思いますが、長い時間をかけて使い込むことで、色や質感が変化することを指します。
使う人の個性によってその変化がひとつひとつ異なることから、「育てる」と表現されることもありますね。

当店でも経年変化が楽しめるアイテムをたくさん取り扱っていますが、なかでも今回は、革と金属を組み合わせてオリジナル商品を生み出す「宇内(うない)金属工業」にお邪魔しました。

訪れたのは、大阪市東成区。
製造業が多く、モノづくりが盛んな地域のひとつです。
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お話をお伺いしたのは、装身具事業部企画課副部長の中村 拓也さん(右)と、企画・営業の石原 実千瑠さん(左)です。
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宇内金属の自社ブランド「clife (クリフ)」では、さまざまな商品を展開しています。
clife (クリフ)
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すべて社内で一貫生産されており、機能的ながらユニークなデザイン性と、素材へのこだわりが魅力です。
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今回の取材では、その誕生秘話から商品に込められた想い、製造現場の様子までたっぷりお届けします。


培われた、デザインの経験
clife (クリフ)の商品は、他の革小物ブランドとはひと味違う、個性的なデザインが目を引きます。
これらをすべてデザインし、形にしてきたのが中村さんです。
でも実は、最初から現在のような商品を専門に作ってきたわけではないそう。

「僕が20代で入社した時は、毎日ベルトのバックルのデザインばっかりやってました」と中村さん。
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当時はまだ、物作りも販売もすべて国内で完結していた時代。
日本人が使う物は、日本人が作って、日本人が販売するのが当たり前でした。
「ところがいつの頃からか、海外に買い付けに行ったり、工場が移転するようになったりして、徐々に国内産業が衰退していったんです」

時代の流れにあわせて、中村さんの仕事も少しずつ変わっていきます。
今までは日本製のバックルだけだったのが、台湾製のバックルもデザインするようになり、また数年後にはバックルだけでなくベルト全体のデザインにも携わるように。
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さらにはお財布もデザインするようになり、どんどん仕事の幅が広がっていきました。


モノ作りへの、熱い想い
「特に財布のデザインって、構造上どうなっているか、わりと緻密に設計していかないと、つじつまが合わなくなってくるんですよ」と中村さん。
「この財布ってどういう構造をしているんだろう」というのを現物を見ながらじっくり調べ、紙を使って自分で財布を試作し、それをお客さんに見せながら製品にしていったそう。
「そうやって設計のノウハウみたいなものを自分の中で作っていけたのが、30代の頃でしたね」と中村さん。
ところが、その状況もまた少しずつ変わっていきます。
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「直接中国に工場を持つような会社さんが出てきたり、金具をもっと安く海外で作って販売する業者さんもどんどん増えはじめて。流通経路の中で、少しずつうちの仕事が減ってきたんです」
中村さんが40代の頃には、デザインの仕事が急速になくなってしまったそう。

「その頃の僕は暇になってきたんで、会社のこととか仕事のこととか、 自分の関わってることに関して、色々深く考えていました」と中村さん。
会社の中で製品のデザインに携わってはいるけれど、実際に製品を作っているのはメーカーさんで自分じゃない。
もともとモノ作りに興味があった中村さんは、もっとモノ作りに関わりたいという気持ちが高まり、仕事とは別の趣味として、カバンの製作教室に通い始めます。

ここが、中村さんのすごいところです。
普通は自分の仕事が減ってしまうと意欲も落ちてしまうものですが、中村さんの探究心は尽きません。
やっぱり“モノ作りが好き”という想いが、根底にあるからでしょうね。
「どんな形のパーツが組み合わさって、この形になっているか。バラバラに開くとどういう形をしてるか。そういうのを考えるのがわりと好きで。頭ん中でずっとシミュレーションしたりしています」


転機となった、カバン製作
「カバン教室に通っているときが、『人生の中でいちばん楽しい!』っていうくらい楽しかったです」と笑顔で語る中村さん。
できることが増えてスキルがあがってくると、今まで趣味でしていたカバン作りを会社の仕事に生かせないかと考えるようになります。

「僕の仕事も減ってきていたし、このままこの状態でいるのは良くないな、と。でも自分にできることっていったらカバン作りくらいだったんで、 じゃあ会社の中で1回カバンを作ってみようと思って、Caramel(キャラメル)というブランドを立ち上げたんです」
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自社でブランドを立ち上げるのはまったくはじめてのことだけに、社内で反対する意見などはなかったのでしょうか。
「わりと自由にさせてもらえたんで、その点はとても恵まれていました。『あんまり無茶するな』とは言われましたけど(笑)」と中村さん。

宇内金属は、エアコンや自動車の部材といった工業製品を手掛ける事業部がメインで、中村さんが所属する事業部だけがファッションにまつわるものを手掛けるちょっと特殊な立ち位置だったことから、ブランドに関することは中村さんにすべて任されていたとか。


「金属 × 革」で、独自の色を
Caramelは中村さんがカバンを作り、販路も色々探しながらやっていたのですが、1人で手掛けていたため「もっと伸ばしていこう」と思っても、量産できないのが難点でした。

「もうちょっと量産に向いてる製品を作りたいなと思いました。うちはもともと金属加工会社なんで、どうせならその金具と革を組み合わせたブランドを作ったらいいんじゃないか、と」
clife (クリフ)
一般的に、金属加工の会社は金属加工ばかり行いますし、革製品を作る会社は革製品の製造ばかり行います。
「うちなら両方できるから、自分たちらしいものができるのかなと思って。金属と革を使って、自分たちでデザインからスタートして、制作まで全部やっちゃう。他のメーカーさんが真似したくてもできないブランドになると思ったんです」

こうして誕生したのが、clife (クリフ)です。


--- ブランドの惹かれたポイント --- 代表 裏家
私も実はこういう背景・ストーリーにとても惹かれました。
革製品を好きな方はとても多いので、日本いいもの屋でもご紹介できるような革製品ブランドはないかな?と探していました。

革製品という分野は作家さんも多くいる分野ですし、作ることそのものはそれほどハードルが高くありません。ですので、素敵なデザインの革製品は沢山見つかるのですが、「日本のものづくりを伝える」というお店のコンセプトにも合ったブランドがなかなか無かったのです。

でもclife (クリフ)は全然違った。金属加工をスタート地点にしています。金属部分が軸にあって革製品を生み出すブランドは知る限り他にはありませんでした!

成り立ちが特殊なので誕生する商品にも特徴があります。金属加工が一からできるので、金属パーツの素材や形状や加工方法でもこだわることができる。他に真似できないパーツがあるので、人とは違うものを探す人にはぴったり。

実は私たちの拠点も東成区。こんなに近くに探していたものがあったとは、、まさに灯台下暗しでした。


金属だけじゃない。革にも永く使える良いものを
clife (クリフ)は、金属部分だけでなく革素材にも並々ならぬこだわりを持っています。
製品に使う革は、すべて「ピットなめし」という製法で作られたもの。
「なめし」とは、牛の原皮が腐ったり変質したりしないように加工する作業のこと。
なめすことで原皮が革へと変化し、私たちが使う革製品になっていくのです。

なめす作業には、植物の渋であるタンニンを使用します。
一般的には「ドラムなめし」といって、ドラム槽に薬剤と原皮を入れてぐるぐると回しながら短時間でなめす製法が主流です。
一方「ピットなめし」は、プールのような槽に原皮をつけて、ゆっくり時間をかけながら徐々になめしていく製法です。
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中村さんはなぜ、ピットなめしにこだわるのでしょうか。
「ドラム式洗濯機をイメージすると分かりやすいのですが、ぐるぐる回すと服の繊維がほぐれるじゃないですか。原皮も繊維が密に絡み合ってるものなんで、やっぱりほぐれちゃうんですよ。でも、ピットなめしだとゆっくりなめしていくので繊維がほぐれず、粘り強くて丈夫な革になるんです」

実際にピットなめしの革を長く使えば使うほど、その良さが分かってくるのだとか。丈夫で美しい、ピットなめし。
clife (クリフ)
「世界でも日本でも、ビットなめしをやっているところって昔はたくさんあったらしいんですけど、 やっぱり手間と時間がかかるんで、どんどんなくなっていって。今、ビットなめしっていったら、日本だけじゃなく、世界でもかなり希少なんです」
そんな貴重なピットなめしを、中村さんは姫路にあるタンナー(製革業者)さんから仕入れています。
実際に姫路まで足を運んで話を聞き、その技術や勤勉さに惚れ込んで、ここの革を使うことに決めたそうです。


味わい深い、真鍮の魅力
製品に使われる金属パーツは、可能な限り、真鍮製のパーツにメッキをほどこさずに使用しています。
そのため、手で触れるとその水分や油分により、アンティーク風な深みを感じさせる独特の色に変化していきます。
clife (クリフ)
こちらの商品は、本体の革も金具の真鍮もイイ感じの色に経年変化したもの。革も真鍮も使うほど経年変化を愉しめる素材。clife (クリフ)の商品は使えば使うほど『私だけの愛用品』へと変化していくので、愛着もひとしおです。


日常に寄りそう、clife (クリフ)のアイテム
ここからは、clife (クリフ)の代表的なアイテムをご紹介しましょう。
clife (クリフ)
GRASPは、シンプルなのにどこか気の利いたデザインが魅力。
カラビナのシャープなフォルムがかっこよく、他とは少し違うカラビナを探す男性からの支持が多いとか。さすが金属加工の会社ですね。
パンツのベルトループに付けても上品にまとまります。
clife (クリフ)
エマージェンシーウォレットONEは、他ではなかなか見かけないユニークな形。
これは財布を考えてデザインしたというより、「お金をどう収納したら小さく持てるか」という発想から生まれたのだそう。

キャッシュレス時代の今、現金しか使えないという場面に備えるのにぴったりですね。
clife (クリフ)
「財布と思って持たれると、正直ちょっと使い勝手が悪い(笑)。あくまで緊急用なんで、ギリギリ我慢できる…くらいのところを意識して作りました」と中村さん。

こうしてみると、clife (クリフ)の商品は、革を開くとひとつになる構造が多い気がしますね。
「そうですね。パーツ数を減らし、ひとつの革をたたむことによってカード入れや小銭入れを作ったりしています。シンプルを突き詰めて無駄なところなくしていった結果、『これで事足りるな』と」

いい素材を使って、シンプルに作る。
当たり前のようでいて、とても難しいことです。

「すごくハイテクな機械で製造してるわけでもないし。革のところももっと上手なメーカーさんもたくさんあるんですけど。簡単に作っているようで、ちょっとした仕立て方とか、その構造とか、デザインのまとまりとかにめちゃめちゃこだわりが詰まってる。そこに気づいてもらえたら嬉しいです」と中村さん。


clife (クリフ)が生まれる、製造現場
では、ここからは実際の製造現場を見せていただきましょう。
まずは、金属パーツを作る工場で、カラビナを作る工程を見せていただきました。
clife (クリフ)
最初に、大きな1枚の板状になっている真鍮を、製品の取り分ぐらいの寸法に細長く裁断していきます。
clife (クリフ)
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こちらは、カラビナのパーツにあわせてカットした状態です。
clife (クリフ)
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先ほど裁断した真鍮を機械でプレスし、製品の形に抜いていきます。
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製品を抜いたあとがこちら。
先に板に小さい穴をあけて、そこを機械にはめ込んでいきながらプレスすることで、ズレないようになっているそうです。
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ちなみに、抜き終わった材料は一か所に集められスクラップ屋さんへ。
こうやって見ると、真鍮が多いですね。
「真鍮は加工しやすいし、プレスで柄も出やすい。研磨やメッキもやりやすいので、よく使われる素材です」
clife (クリフ)
先ほどの型抜きでは上から圧をかけて抜くので、どうしてもカラビナの裏にあたる下側が膨らみます。
これを表も裏も同じ状態にしたいので、もう1度プレスして平らにします。
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画像だと少し分かりにくいかもしれませんが、左が平らになった状態、右が平らにする前の状態です。
こうやって細部まできれいにしていくのが、こだわりのポイントですね。
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このあと、ブランド名や「MADE IN JAPAN」等の文字をプレスして刻印します。
プレス作業はここで終わり、続いては研磨です。
clife (クリフ)
機械の中にカラビナと石と水、洗剤のような液体を入れ、1時間半ほどぐるぐると回転させて研磨します。
機械の中にある白い物体は、大きな泡!
本当に洗濯機のようでした。
clife (クリフ)
研磨したばかりのピカピカのカラビナが、画像の奥側になります。
ちなみに手前はスタッフさんの私物で、3年ほど使った状態だそう。
こうして並べると、真鍮がイイ感じに変色してるのが分かりますね。

続いては、革の裁断や縫製、組み立て作業なども見学させていただきました。
clife (クリフ)
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バネをつけたり、カシメを付けたりといった作業も、社内で一つ一つ丁寧に行います。
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GRASPだけは、カシメを潰してフラットにしたデザインのため、圧が強めにかかる機械を使います。
カシメひとつとっても、こだわりがすごいですね。


clife (クリフ)のこだわりを、これからも
最後に今後の展開について、お二人それぞれにお伺いします。
まずは、入社10ヶ月の石原さんです。
これからどんな商品を作っていきたいか、思われてるところってありますか。

「男女関係なくどちらでも使える、ユニセックスなものとか。革製品だけでなくて、もうちょっと金属に特化したものとか。色々やってみたいですね」
石原さんは、前職が服関係のお仕事だったそうです。
「以前は、トレンドを追って勉強してるような感じだったんですけど。逆に今は、流行りのものとか、まわりの子たちが求めてるものとかを吸収して、clife (クリフ)に反映していけたらいいなと思います」
clife (クリフ)
石原さんのように、客観的に見てもらえるスタッフがいると助かりますね。
「そうですね。石原さんには、主にSNS関係を任せてます。今までは、考える仕事って僕1人でやってたんですけど。そこに彼女が入ってきて、一緒にこのブランドを作っていこうとしてて。相談したことに対してわりと的確に答えてくれるんで、頼りにしてます」と中村さん。
そういう意味では、またここから変化しつつ、ブランドをしっかり伸ばしていければという感じでしょうか。
「そうですね。今までずっと、手探りで考えながらやってきたんで。これからも多分、それをずっと続けていくんでしょうけど、やっぱりブランドを成長させたいっていう欲が最近は出てきてますね」
clife (クリフ)
「僕しか考えられないデザインのところは、しっかり考えて考えて。他のブランドがやらないデザインや形っていうのは、絶対外さない方がいい。そこを外しちゃうとブランドの意味がなくなってくると思うんでね」

技術としてはシンプルであっても、簡単には真似できないこだわりがぎゅっと詰まっている。
自分の持ち物にこだわりのある方には、きっと魅力を感じていただけるブランドだと思います。

宇内金属工業の皆さま、取材にご協力いただき、誠に有難うございました。




clife (クリフ)の商品一覧




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