『小鳥の箸置き』

小鳥の箸置き


僕の彼女。

日頃着る服も、特別目を引く感じでもなくて、デートでもそれは同じ。

それを彼女は、

ーわたし、センスなくて

と言う。

彼女が着ているのは、アイロンが当てられたシャツ、きちんと折り目がついたスカート。

なので、僕は、彼女がすきだ。

シュークリームを頼んだら、かたくなにナイフとフォークで食べる彼女。

手掴みでほおばって、口いっぱいにクリームが広がる味わい方は、だから僕が教えてあげた。

今日、初めて訪ねた部屋で、彼女が作った晩ご飯を、初めて食べる。

ランチョンマットを敷いて、箸置きをきちんと使うところに、彼女らしさを感じた。

「あれっ、小鳥だ」

わたしの彼。

ハツラツとして、講義中、挙手して教授に意見することもあるような、目立つ彼。

わたしなんかではとても釣り合わないと、初めは彼からの告白を断った。

それでも、一緒に食堂でご飯を食べるようになって、いつからか付き合いだした。

初めてうちに招くことになったとき、カタカナの料理に挑戦しようとしたけれど、

結局何度も作った、名前もない、だけどお気に入りの、いつものご飯を用意した。

テーブルで待っていた、彼が言った。

「あれっ、小鳥だ」

「小鳥が箸にとまってる」

こういうことに気づいてくれて、喜んでくれる。

だから、わたしは、彼がすき。





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