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陶器・磁器の産地紹介
日本のやきものの特徴を産地ごとに紹介
毎日の食事は、わたしたちのエネルギーを蓄える大切な時間。料理をよそう器も大切な存在です。お気に入りの器を使うと料理がもっと美味しく感じられ、食事の時間がさらに豊かになります。
日本にはさまざまな個性をもつ素敵なやきものがたくさん。各地のやきものの特徴を産地ごとにご紹介します。器選びにお役立てくださいね。
目次
・
やきものの多様な楽しみ方
・
「陶器」と「磁器」を見分ける4つのポイント
・
伝統ある日本のやきものを産地ごとに紹介
・
〜関東〜
益子焼|栃木県
・
〜中部〜
瀬戸焼|愛知県 常滑焼|愛知県 萬古焼|三重県
美濃焼|岐阜県
・
〜北陸〜
九谷焼|石川県 越前焼|福井県
・
〜関西〜
清水焼|京都府 赤膚焼|奈良県 丹波焼|兵庫県
信楽焼|滋賀県
・
〜中四国〜
備前焼|岡山県 萩焼|山口県 砥部焼|愛媛県
・
〜九州〜
小石原焼|福岡県 小鹿田焼|大分県 唐津焼|佐賀県
有田・伊万里焼|佐賀県 波佐見焼|長崎県
三川内焼|長崎県 薩摩焼|鹿児島県
・
お気に入りのやきもので食卓を彩りましょう
やきものの多様な楽しみ方
器の魅力は奥が深く、色や装飾、かたち以外にも見どころがたくさんあります。日本にはやきものの産地が多くあり、産地ごとの伝統や風合いを感じとれることが魅力です。
成形方法や焼成方法、釉薬によって、器はさまざまな表情を見せてくれます。
瀬戸、常滑、越前、信楽、丹波、備前の6つの産地は、「六古窯(ろっこよう)」と呼ばれています。中世から勢いよく生産を続ける6つの窯の総称として、戦後に名付けられました。
歴史あるやきものの産地を訪れたり、のぼり窯を見たりするのも、楽しみ方のひとつです。産地や作家さんによって異なるさまざまな魅力に触れることができますよ
。
「陶器」と「磁器」を見分ける4つのポイント
やきものは、「陶器」と「磁器」のいずれかにあてはまります。区別が難しい場合もありますが、器を楽しむために知っておきたいポイントです。
①原料
陶器は「土もの」といわれるように、陶土(粘土)から作られます。見た目からも、土のやわらかさを感じられる器が多いでしょう。
磁器は陶石と呼ばれる石の一種を砕いて原料にしていることから、「石もの」と言われています。見た目はシャープな印象。白くつるんとした表面に、繊細な色絵が施された作風も多く見られます。
②産地
陶器づくりで有名な産地、磁器づくりで有名な産地がありますので、作風と産地が見分ける目安となります。陶器・磁器の両方が作られる産地の場合、産地だけでは判断が難しい場合も少なくありません。
③触り心地
陶器は手に馴染むような柔らかい触り心地です。粗い陶土で作られた陶器は、ざらざらとした手触りのものもあります。磁器はつるつるとしています。
④高台の色
器の高台(底)には釉薬をかけませんので、高台を見るのが最も見分けやすい方法です。陶器の高台は茶色や黄土色など、土の色をしています。磁器は白色です
。
伝統ある日本のやきものを産地ごとに紹介
日本には伝統を誇るやきものの産地が多くあります。古くから伝わるやきものはもちろん、時代に合わせたモダンなやきものも見逃せません。抑えておきたいやきものの魅力を産地ごとに紹介します
。
【関東地方】
・益子焼 | 栃木県
益子は関東エリア有数の民芸陶器の産地です。江戸時代末期から長い歴史をもつ産地ですが、よそからの作家を受け入れる寛容さがあり、現在では個人の作家が多い産地としても有名です。
益子焼はぽってりと厚みがあって、素朴で温かみを感じられる陶器。益子の土は粗く砂気が多いため、土の風合いがよく出ていることが特徴です。
多くの陶芸家によって窯を開かれた現在は、伝統的な民芸陶器からモダンで芸術性の高い作品まで個性豊かな陶器が見られます
。
【中部地方】
・瀬戸焼 | 愛知県
瀬戸焼は愛知県瀬戸市で作られる陶磁器。平安時代から1000年もの歴史と伝統をもち、日本を代表するやきものです。「せともの」という呼び名は瀬戸焼から。陶磁器の代名詞になるほど、人々の暮らしに浸透しました。
伝統的な七種類の釉薬(灰釉、鉄釉、古瀬戸釉、黄瀬戸釉、志野釉、織部釉、御深井釉)が使われる赤津焼が有名。落ち着いた色味で艶があり、高級感がある作風。武士の間でも愛されていたやきものです。
・常滑焼 | 愛知県
愛知県常滑市で作られる常滑焼は平安時代に始まり、六古窯最古の歴史をもつやきものです。 古くから壺や甕を作られてきたことでも有名。太い粘土紐を接ぎ足しながら成形される大甕は、素朴ながら力強い作風です。
幕末からは、茶の流行にそって朱泥急須も多く生産されました。紅葉したもみじのように鮮やかな色をした上品な急須が、今でも多く作られています。
〈お取り扱いブランド〉
JINSUI
朱泥だけじゃない。日本一の急須の産地の作り手が手がける、現代の急須。
・萬古焼 | 三重県
萬古焼は三重県四日市市で作られる陶器、半磁器。発祥は江戸時代の中期で、伊勢国桑名の豪商・沼波弄山(ぬまなみろうざん)が茶の趣味が高じて茶陶を焼いたことから始まりました。
萬古焼で特に有名なのが紫泥急須。鉄分を多く含み粘りのある赤土を使って成形し、酸素の供給が少ない還元炎で焼成されることにより、独特の濃い紫色をしています。使い込むほど艶が増す優雅な作風です。
〈お取り扱いブランド〉
かもしか道具店
ごはんのお鍋やおひつなど、ごはんに関わるやきものを販売しています。
・美濃焼 | 岐阜県
美濃焼は、岐阜県多治見市、土岐市、瑞浪市などで作られる陶磁器。古墳時代からやきものが作られ、日本屈指のやきものの産地と呼ぶことができます。
安土桃山時代が栄えて茶の湯が流行した頃より、黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部といった「美濃桃山陶」が誕生。古くから茶陶が多く作られてきました。作風は土の風合いを感じるものから、草花の色絵が描かれた優雅なもの、シンプルでモダンなものまで多様です。
〈お取り扱いブランド〉
小田陶器
シンプルで現代の暮らしに馴染む白い器を販売しています。
瑞々
伝統とモダンを融合したまる皿やすみきり皿などを販売しています
。
【北陸地方】
・九谷焼 | 石川県
九谷焼の産地は石川県金沢市、加賀市、小松市、能美市など広範囲。江戸時代初期にはじまりました。九谷焼の特徴は、なんといっても色鮮やかで豪華絢爛な絵柄です。
紫・緑・黄色を基調とした濃く艶のある色絵は、鳥や花、風景などの絵柄が多く見られます。中には金を加えて装飾されたものも。華やかで重厚感がある色絵磁器の技術が、現在も受け継がれています。
〈お取り扱いブランド〉
KUTANI SEAL
九谷焼をもっと身近に感じられる現代的でかわいい器。転写技術を生かして作られています。
・越前焼 | 福井県
越前焼は海と山に囲まれた自然豊かな福井県丹生郡で、平安時代にはじまりました。常滑焼の影響を受けて壺や甕などが多く作られ、かたちは常滑焼に似ています。
窯の中で薪の灰が降りかかると、自然の釉薬となって流れる。力強く豪快さを感じる風合いが魅力です。現在も昔ながらの技法を継承されながら、大きな壺から日用食器まで、表情豊かな陶器が作られています。
。
【関西地方】
・信楽焼 | 滋賀県
タヌキの置きもので有名な信楽焼は、鎌倉時代中期にはじまったと言われています。大きな壺や植木鉢、花器、茶器、日用食器が、豊富な土と多彩な釉薬で作られてきました。
信楽焼の特徴は、粗い土質と耐火性を生かした暖かな表情。窯の中で灰が熔けることで生まれる自然なビードロ釉が魅力です。土に含まれる鉄分が焼成によって明るく発色します。土の温かみと美しい個性を感じられる陶器です。
・京焼・清水焼 | 京都府
桃山時代以降に京都市や宇治市で作られたやきものを、京焼や清水焼といいます。古くから政治や文化、政治の中心として栄えた京都では、京焼もその一端を担い、花器や茶器、食器などが作られてきました。
京焼・清水焼は、古都の雅を表すように華やかな色絵陶磁器。草木や自然の風景を精巧かつ華麗な技術で描かれ、赤や緑、金などの鮮やかな色で装飾されていることが特徴です。
・赤膚焼 | 奈良県
赤膚焼は奈良県奈良市や大和郡山市で作られる陶器です。古墳時代からやきものが作られていたといわれています。陶土に鉄分が多く含まれていて、焼き上がるとほんのり赤く色づくことから、赤膚焼(あかはだやき)と呼ばれています。
赤膚焼で有名なのは奈良絵。鹿や鳥居、人物などが描かれた素朴で優しい雰囲気の器です。 古くから茶人に愛されてきたというだけに、シンプルでありながらも上品な作風です。
・丹波焼 | 兵庫県
兵庫県丹波篠山市で作られる丹波焼は、平安時代末期にはじまりました。現存する丹波焼最古の登窯は非常にスケールが大きく、県の有形民族文化財に指定されています。穴窯で焼成する焼締めから登窯での施釉陶まで、伝統技術が現在も受け継がれています。
丹波焼は、使いやすい暮らしの陶器。自然釉がかかる焼締は、深い緑色のビードロが見ものです。多彩な技術を用いて、個性豊かな日用雑器が作られています
。
【中四国地方】
・備前焼 | 岡山県
備前焼は岡山県備前市、瀬戸内市で作られる陶器。焼締の代名詞といえます。備前地区で古墳時代から作られていた須恵器の製法が時代とともに変化して、現在のような赤褐色の備前焼が誕生しました。
備前焼の特徴は、釉薬をかけず、色絵付けもしないシンプルな焼締陶。土の力強さと、窯の炎による多彩な景色がみごとで、同じ色や模様のものがないことが魅力です。
〈お取り扱いブランド〉
DAIKURA
伝統技術で作られ、唯一無二の柄を楽しめるやきものを販売しています。
・萩焼 | 山口県
400年の歴史をもつ萩焼は、古くから茶人たちの間で親しまれてきました。登窯の中で炎が生む「窯変」の魅力を感じられます。萩焼は吸水性が高く、使い込むうちに表面の細かいヒビ(貫入)から茶が染み込み、器の内外の色が変化していくことが特徴です。「萩の七化け」と呼ばれています。
絵付けなどの装飾をせず、土の風合いを生かした柔らかい作風が特徴。萩焼の器は、高台の一部分を切り取った「切り高台」が多く見られます。
・砥部焼 | 愛媛県
砥部焼は四国エリアを代表するやきものの産地。愛媛県砥部町で作られる磁器です。江戸時代中期までは陶器が作られていましたが、地元の砥石くずを原料にした焼成に成功し、磁器づくりへ転換しました。
砥部焼は、ぽってりとした厚手の白磁に藍色の絵付けがされています。代表的な模様は「唐草」。手書きの温かさを感じられ、日常に溶け込むデザインが魅力です
。
【九州地方】
・小石原焼 | 福岡県
福岡県の小石原地区は、山に囲まれた自然豊かな場所。陶器に適した土と登窯の燃料に欠かせない木々に恵まれた環境があるため、古くからやきものが作られてきました。
小石原焼といえば、日用雑器。素朴でありながらデザイン性が高いと評価されています。ロクロで成形しながらハケで模様を入れる「刷毛目」や、刃先で化粧土を削る「飛び鉋(とびかんな)」による模様が印象的です。
・小鹿田焼 | 大分県
小鹿田焼は大分県日田市の山間にある皿山という場所で作られる陶器。集落を流れる川の水を利用して陶土を砕く「唐臼(からうす)」の音が響き渡ります。唐臼は使うやきものの産地は小鹿田焼だけといわれています。
福岡県の小石原焼と兄弟窯であることから作風が似ており、「刷毛目」や「飛び鉋」、「櫛描き」の技法や、「流し掛け」、「打掛け」といった装飾が魅力。暮らしに馴染む陶器づくりが受け継がれています。
・唐津焼 | 佐賀県
唐津焼は佐賀県唐津市で桃山時代にはじまりました。唐津焼の茶碗は茶人たちに愛されてきたことで知られますが、茶陶から日用の器まで、さまざまな種類のやきものがあります。
装飾方法は、鉄絵具で絵柄を描いた「絵唐津」や、藁灰釉を用いて焼かれた白い器肌に青い斑点が現れる「斑唐津」、朝鮮から受け継いだ「三島唐津」、「粉引唐津」など。粗い土で作られる、素朴で力強い作風が魅力です。
・有田焼・伊万里焼 | 佐賀県
佐賀県有田市と伊万里市はとなり同士。古くから陶器が作られていましたが、江戸時代前期に有田町周辺で陶石が発見されて以降、磁器づくりへと転向しました。有田焼は伊万里港から各地へ輸出されたことから、「伊万里焼」とも呼ばれています。また、磁器発祥の地としても有名です。
有田焼・伊万里焼の特徴は、美しい色絵による装飾。色絵付けに染め絵を融合した染錦(そめにしき)や、金箔・近泥で描く金襴手(きんらんで)の技術を使う「古伊万里様式」など、豪華絢爛で気品ある磁器が受け継がれてきました。
〈お取り扱いブランド〉
by koransha
名窯 香蘭社が取り組む新たなブランド、高い技術や技法はそのままに日常使いできる商品を展開
・波佐見焼 | 長崎県
波佐見焼は長崎県波佐見町で作られる磁器。歴史は古く、はじめは施釉陶器を焼いていましたが、江戸時代初期ごろから、染付や青磁、白磁を中心とする磁器生産へと転換しました。厚みがあって簡単な絵柄の磁器「くわらんか碗」が誕生したことで、庶民にも一気に広がりました。
波佐見焼はシンプルな模様の装飾が主流で、暮らしに馴染む日常の器。現在ではモダンでおしゃれなデザインの器も増え、若い人たちからも人気の高いやきものです。
〈お取り扱いブランド〉
nucca
伝統色を使ったシンプルでモダンな器をカラーバリエーション豊富に販売しています。
・三川内焼 | 長崎県
三川内焼は長崎県佐世保市で作られる陶磁器。江戸時代からはじまり、当初は「平戸焼」と呼ばれていましたが、その後、質の良い陶石がある三川内に移って陶磁器を作るようになりました。高級な食器をヨーロッパへ輸出していたことでも知られています。
三川内焼の特徴は、白い磁器に藍色の絵付け。草花や人物を描かれた「唐子絵」が有名です。 繊細な筆使いを感じられ、シンプルでありながら美しい作風です。
・薩摩焼 | 鹿児島県
薩摩焼は鹿児島県内で作られる陶磁器の総称です。華やかで気品漂う色絵が施された「白もん」と、鉄分を多く含む陶土で作られ力強さを感じられる「黒もん」があります。対照的な2つの顔を楽しめる珍しい産地です。
白もんは有田焼の影響を受けた芸術性が高い作風。黒もんは薩摩地方で古くから作られ、庶民に親しまれてきたやきものです
。
お気に入りのやきもので食卓を彩りましょう
やきもののは、産地の陶土や陶石を使って、さまざまな伝統を受け継いで作られています。 歴史や特徴を知ることも、器の楽しみ方の一つです。
日本いいもの屋では、こだわりを持って作られた現代の暮らしに馴染むやきものを販売しています。お気に入りの器で食事の時間をより豊かに彩ってみませんか?
〈参考文献〉
「こんなに楽しい日本のやきもの」講談社
「やきもの大辞典」ナツメ社
「やきものの楽しみ方 完全ガイド」池田書店
「やきものの教科書」誠文堂新光社
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