それぞれの " ものがたり "
『虫喰いの壁掛け時計』
新築祝いに何を選んだらいいかわからなくて、
スマホ片手に「ぽいもの」を検索してみたものの、
千差万別でさっぱり参考にならなかった。
こんなときは本人に聞こうか、
「御祝いになにかほしいものあるかい?」
いやいや、遠慮深い彼ら夫婦がすんなり答えるはずがない。
そういえば30年ローンの支払いとか言っていたっけ、
いっそ現金を贈ろうか・・・。
などと考えていたら、新しいメッセージを受信した。
画像つきで、その画像は彼ら夫婦の新しい家の、
遠慮がちに遠くから撮影された外観写真だった。
「うぉ」 思わず声が漏れる。この家って、なんて・・・。
それから、お互いの休みを合わせて、家族で彼らの元を訪ねた。
車をどこに停めたらいいか、連絡しようとしていたところに、
気配を察して笑いながら彼が家から出てきた。
上にタープが張られた広いウッドデッキの窓が開き、
すっかりお腹が目立ち始めた奥さんが顔を出す。
茶褐色のウッドデッキには、折りたたみ式の木のテーブルと椅子が置いてある。
キャンプ好きな彼らが選ぶものは、開放的な空の下がとっても似合う。
彼らのもてなしが、玄関を入ってすぐのセントラルキッチンで待ちかねているのが見える。
キッチンのステンレス以外は、どこを見渡しても天然の、木、木、木。
蹴込がなく踏み板が開放的に並んだ階段を見つけた息子が、さっそく登って手を振る。
吹き抜けが面白いのか、大きな声で息子が僕らを呼ぶ。
遊ぶに事欠かない、木の家だ。 「新築、おめでとう!」 どこもかしこも、
天然の木で作られた彼らの城は、真新しいのに他人行儀でないのがとてもいい。
旧知の友人に今更かしこまるのも恥ずかしく、片手で新築祝いを渡した。
開ける様子を目の前で見るのが苦手なので、息子を追うふりをして二階へ上がった。
家の写真を見て選んだ、壁掛け時計は、きっとこの家の壁に馴染んでくれるだろう。
ものがたりに登場する商品
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虫喰い材の壁掛け時計 |
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