それぞれの " ものがたり "
『常滑焼の急須』
今度の旅行は尾張方面へ、パワースポットや城廻りをしてきたそう
銘菓と焼き物を手土産に、夕飯を食べてもまだ母は帰らず、
リビングで主人相手に喋り続けている
仕事があるから、と私だけが自室に戻る
パソコンを見つめる目が乾くように痛む
痛いといえば腰も痛い
そもそも仕事が終わらなくて頭が痛い
自宅でできる仕事でいいねと言われるけれど
時間の制限がない分
仕事はいつまでも私を解放してくれない
そばに主人の気配がして振り返ると、お盆を手にして立っていた
ありがとうと受け取ってから、初めて見る急須に気づいた
いつもなら、湯呑み片手に様子見に来るのに
「お義母さんが持って行ってって。さっき帰ったよ」
私の湯呑みと一緒にお盆に載った丸い急須は、自然な白い色で、
常滑焼独特の赤茶色じゃないってさっき母が話していた。
ざらりとして、ピッタリはまった蓋を持ち上げると
中の広い空間で、茶葉はすっかり気持ちよく広がっている
茶漉しなしで使えるしきっと便利よ、とは母の弁だが
茶葉が好き好きに広がる内側を見つめていたら、
気持ちよさそうで、羨ましく見えた
これだけ思いっきり身体を伸ばせたら気持ちいいだろうな
うーん、と一つ伸びをして
お茶を飲んで、薄焼きの海老煎餅を食べた
ーあぁ、美味しい。
よし、今日はこれだけ、あと、これだけ。
ここまで進めたら、今日は終わろう。
そしたらお風呂上がりにストレッチでもいいし、
久しぶりにヨガをするのもいいだろうな
お土産を持ってきてくれた母を思い
母の相手をして、お茶も淹れてくれた主人を思う
周りの人の優しさと美味しいお茶で 少し解れた身体と心を、
明日はもっと労ってあげよう
ものがたりに登場する商品
JINSUI
『季節の手ぬぐいのタペストリー』
私の母は季節の飾り付けに消極的になった
気づいたきっかけは今年のクリスマスのツリーがなかったこと
玄関でお土産を渡しながらすぐに気がついて、
こんなの寂しい!と母に訴えたら
準備も一人で飾ってもお父さんは無反応で
片付けても気が付かないなんてやりがいがないのよ、と母は答えた
確かにそれはその通りで、私も弟も立て続けに結婚はしたものの
まだ子どもが産まれる気配はどちらもなくて
車で日帰り往復できる距離なのに
仕事を理由に実家にはほとんど顔を出さない
実家と言っても、今両親が住む場所は
去年二人住まい用にと住み替えた、前よりも小ぶりなマンションだから
実家感は全然ないけれど
まだ私たちが小さい頃は
春にはお雛様達がふたり並んだ雛飾りを玄関に並べて、
5月には窓から聞こえる鯉のぼりの吹き流しが出すカラカラという音を聞きながら眠っていた
笹飾りやお月見も、アルバムに残っているだけで、近頃の記憶はほとんどないし
年末年始に玄関にある鏡餅だけが唯一の、今なお残る季節感ある飾りつけかもしれない
ちなみに鏡餅は、後で食べられるから好きなんだとは母の弁である
その日夫と晩酌しながら話した
子どもが大きくなったら季節のイベントって卒業でいいのかな
うちも同じじゃない?夫婦二人だけの住まいで、
お正月飾りやクリスマスツリーもやってないね
やってみたいのにやらない理由は、そういう飾りのオフシーズンの、収納場所がないから
スマホの画面を私に向けて、夫が言った
あ、そしたらこれ飾るのはどう?
画面に並ぶのはタペストリーのように飾られた手拭い
鮮やかな染色の柄は十二支デザインや雛祭り、ハロウィンもあって
専用の額縁で飾ると、手拭いは色鮮やかな絵画のようになる
手拭いってアートになるんだ!と、感動に近い再発見をして、
早速額縁と手拭いを、あれもいいこれもいいと購入した
手軽に使えるマグネット式のタペストリーも買ったから
お母さんにどれが欲しいか聞いてみよう
私の家にも、両親の家にも同じように飾れたらそれってすごくいいかも
昔の母もきっとこんな気持ちだったんだろう
両親が喜ぶ姿を想像して、届く前から顔が緩んだ
ものがたりに登場する商品
マグネット式 手ぬぐい用タペストリー棒
手ぬぐい額
『グラスコード』
今年も誕生日が近づいてきた、少し遠くに住む、母の誕生日が。
これまで何十回と渡した、母への誕生日プレゼントだけど
物を大事にする母が、ちゃんと使ってくれているものはいくつあるだろう?
小さい頃贈った母の日のお花は、毎年食卓に飾ってくれていたけど、
還暦祝いに兄妹からだよと奮発した漆器は食器棚にしまい込んだまま。
おしゃれなお財布も何度か選んだけれど、そのうち数個は箱から出してもいないらしい。
「だって、まだ前のが使えるから」
それがお決まりの母の言葉、
母への贈り物は本当に難しい。
今年の誕生日は週末なので、兄家族はみんな揃って、母を食事に連れていくらしい。
『おまえも来る?』
やりとりの途中、半分冗談だろうけど、兄がLINEで聞いてきた。
『なんの節目でもないのに行かんよ!金曜日は忙しい』
と断った。
なんの節目でもないって自分の言葉に
誕生日に特別、特別じゃない、なんてことがあるのかなと考えこんでしまった。
でもまだまだとても死ぬような歳でもないし、やっぱり「ただの誕生日」としか思えない。
何が欲しいか聞いてそれをそのまま買って渡そうかと母に久しぶりに電話してみた。
最初の電話は案の定出なくて、しばらくして母から電話がかかってきた。
「整骨院に行っとったんよ。もー肩が凝って肩が凝って」
お盆に帰らなかったことを言われるかな、とチラッと頭をよぎったけれど、それは何も言われなかった。
「お兄ちゃんたちとご飯行くとき、一緒に行けんから、何か送ろうかなって」
「この歳で、なーんもいらんよ」
去年もこんな会話をしなかったっけ、と思い出しながら話を続けた。
「じゃあ勝手に選ぶよ、使ってよ」
「はーい、ありがとう。安いのでいいよ、なんでも嬉しいわ」
結婚したり、子どもが生まれたり、二人目が生まれたりする兄と違って
わたしは相変わらずの一人暮らしで、十年前から何も変わらない。
変わらないことを、母は何も言わない。
その十年の間に、母は常にメガネをかけるようになり、白髪が倍以上になった。
出かけるときも飾りっ気がなくて、肩が凝るからとアクセサリーもつけない。
でも、昔からそうではなかったか?母がアクセサリーをつけていた姿が思い浮かばない。
「あ」
思い出した。昔の母。
そして今年のプレゼントを思いついた。
母は昔から肩が凝るのが嫌で、重いコートやネックレスが苦手なんだった。
わたしも同じ理由で、重いコートが嫌いだし、ネックレスは滅多につけない。
でも、ポケットに忍ばせたハンカチには、優しい色で刺繍飾りが入っていたりする。
スマホを開いて、イメージしたものを探す。
軽くて、きれいな、眼鏡用のストラップがもしもあったら。
それは今の母にぴったりなプレゼントになるかもしれない。
つけてないくらいに軽くて、気持ちが華やぐような優しいきれいな色の。
「これいいかも」
とうとう、わたしは見つけた。たった六グラムのグラスコード。
今の母にあげたい物、これならすぐ開けて、使ってくれるかも。
いや、すぐに、使ってもらおう。
そして注文したグラスコードが届いた。
グラスコードの包みを手に乗せてしげしげと眺めているうちに気が変わり、
わたしは、兄に急いでLINEした。
『金曜日、ご飯、わたしも行く!いい?』
兄からはスタンプだけで返事が来た。ピコン、ピコン。
『やっぱり!』『了解!』
そういえばいつかの誕生日も、「ただの誕生日」なのに、会いに帰ったんじゃなかったっけ。
まぁいいか、プレゼントは予算内だし、浮いたお金で会いに行こう。
そして、すぐにつけてね、って、直接言って、「ただの誕生日」を一緒に祝おう。
ものがたりに登場する商品
ooo/トリプルオゥ
『ゆずの香りのハンドクリーム』
ばぁちゃんが動かなくなった。あんまり、動かなくなった。
寝てばっかりで、声をかけてときどき、顔だけゆっくりこちらを向く。
ご飯を食べるときはベッドが動いて、ばぁちゃんの上半身だけが起き上がる。
ばぁちゃんが顔を動かすのと同じくらい、ゆっくり。
ばぁちゃんと一緒に暮らしていたのは18歳までで、
わたしが家を出ると同時に、ばぁちゃんは伯母、つまり自分の娘と暮らした。
抜け殻になった家はそのまま海の近くにあって、時々風を入れ替えるだけだけの場所になった。
それからのばぁちゃんは台所の主ではなくなり、腰はどんどん曲がった。
それから3年経って、インターンのため半月だけ、地元に戻った。
そのとき、ばぁちゃんはわたしのために台所へ立った。
叔母の家から離れ、わたしが寝泊まりする海の近くの家にやってきて
混ぜご飯と、芋のまんじゅうを作り、朝は漬物をどっさり並べて、
夜はそんなに好きじゃないちくわの入ったカレーを作ってくれた。
それからまた地元を離れて一人で暮らして、わたしは時々しか家に顔を出さず、
ばぁちゃんは伯母の家も離れて、年寄りばっかりが暮らす施設で暮らし始めた。
そして今、目の前には、ほとんど動かなくなったばぁちゃんがいるのだ。
返事がなくてもマシンガンのように話しかける伯母と、ゆっくり動くばぁちゃん。
ご飯を食べるためベッドがゆっくり持ち上がり、伯母が食事をばぁちゃんに食べさせる。
その様子をただ見ていた。
やることがわからない、お見舞いは苦手だ。
ご飯が終わって、お土産、渡したら帰ろう。
食事の間、知ってるくせに、伯母はわたしがどこに住んで何をしてるかを、ばぁちゃんの前で聞く。
伯母に答える流れで、ばぁちゃんの方を向く。
ばぁちゃんの目はシワシワの中に埋もれている。
手もシワシワ。小さくて、シミがあって、シワシワ。
手早く動いて、かぼちゃだって包丁で切ることが出来るほど力があった手なのに、
触ると手のひらはすべすべで、つまんだら皮はびっくりするくらい伸びる。
ショルダーバッグを開いて、ハンドクリームを取り出した。
箱に入ったハンドクリームを枕元の棚に置いた。
それでお見舞いを終わろうと思ったけど、もういっかいバッグを開けて、
使いかけのハンドクリームのチューブをわたしの手の甲に絞った。
チューブの蓋を閉めてから指先で取って、ばぁちゃんの手にクリームを広げた。
ばぁちゃん、この匂いすき?
ばぁちゃん、わたしも同じの使ってるんだよ。
ばぁちゃん、手しわしわね。
すりすり、ばぁちゃんの手をさすりながら、涙がぶくーっと浮かんでつーっと流れる。
ばぁちゃん、また来るね。
ばぁちゃんのお見舞いへ行くのは、やっぱり苦手だ。
ものがたりに登場する商品
オーガニック国造ゆずハンドクリーム |
『洗える帆布バブーシュ』
抜けた歯もきれいに生え揃って
すっかり一人前の子供になった君
子供になる前のもっと小さかった頃の君を
最近
何かにつけて思い出すんだよ
お子様ランチは最初から食べなかった
全然離乳食も食べなくて心配したよ
かと思ったらうどんだけはやたらと食べて
外食では私が必ず麺類を頼んで取り分けたんだ
その代わりお子様ランチを頼んだのは数えるほど
あっという間に 大食らいの君は
大人と同じメニューを食べるようになっていた
あんなに好きだったうどんは なんなら好まなくなって
肉とご飯ばかり山盛り欲しがるようになった
うちはいつも窓を開けているから
外からいろんなものが 部屋に流れてくるようで
裸足が好きなあなたの小さな足裏は うっすら汚れていた
光の加減で廊下にうっすら小さな足跡が見えたんだよ
小さな足跡 写真にも残ってないのに
私はなんでかそれを思い出せるんだ
だから大人とおんなじ 室内履きを履こうねって
スリッパだと逆の足で踏んづけて転ぶから
踵を立てるバブーシュを探したんだ
私が選んだ小さなバブーシュ 君のイメージカラーだったんだよ
一番小さなそのサイズはKidsサイズと書いてあった
いつだっけかはコーヒー牛乳をぶちまけて心配したけど
ちゃんときれいになったんだよね あの時は怒ってごめんね
汚した服と同じようにバブーシュも何度も洗濯して
そのうち生地がへたるより先に踵を立てて履けなくなった
その代わり踵を踏んで履いても、転ぶことは無くなった
ねぇ、君。
本当に 本当にすっかり 大きくなったんだね
Kidsサイズはもう卒業だから
お子様ランチは最初から食べなかったけど
バブーシュも大人のサイズになるんだ
大きくなってくれて嬉しいんだよ
寂しいなんて贅沢だよね
今度のバブーシュの色は 君が選んだ
これからはもう、自分で選び取っていくんだね
私より少し小さい 色違いの
新しいバブーシュを隣に並べる
まぁだまだ私より小さい足なんだから
大きくなったって言ってもまぁだまだ
追い越されてから寂しがろう
まぁだまだ そうしよう
ものがたりに登場する商品
帆布バブーシュ |
『優しい洗濯洗剤』
毎週月曜日のポイント3倍デーに、薬局であれやこれやを買う。
エコバック2つをパンパンにして、自転車の前カゴに軽いもの、
後ろ座席に重いものを入れて家路を急いだ。
夜。
晩御飯の片付けをしていたら、お風呂場から
「ママ~、入浴剤がなくなったよ~」
と声をかけられた。入浴剤…今日は重くて諦めたんだった。
「ごめん、買い置きもないの、また来週薬局で買ってくるわ」
と答える。敵意が湧くのは何故だろう。
翌日。
公園で子供を遊ばせながらママ友と話していたら、みんな同じことで腹を立てていた。
「なぜ家に詰め替えのストックがあるか、なぜ人知れず詰め替えてあるのか、知ってほしいよね」
名もなき家事の愚痴をひとしきり喋ったあと、ママ友の一人がおもむろに話し始めた。
「わたしが使い始めた洗剤なんだけど」
それは『THE』というシリーズの、洗濯用洗剤の話だった。
洗濯洗剤と、おしゃれ着洗剤と柔軟剤を兼ねてる上に、1回に使う量がすごーく少なくて、その上エコで地球にも優しい、と。
「でも1本が高いのよ、でもね」
みんなうんうんと話を聞く。高いんだったらちょっとね、そう思うけど、素直に話を聞いた。
「詰め替える頻度減るって、本当に助かるのー!」
もう使い始めて2ヶ月経つのに、まだ一度も詰め替えてなくて(!)、
なんでもフンワリ仕上がるから、専用洗剤も柔軟剤も買わなくなって(!)、
洗濯機自体も綺麗になってパイプの汚れも落ちちゃうから、洗濯機の掃除も不要になったと(!)。
それを聞いていた別のママ友が言う。
「ちょっとくらい高くても、詰め替えの手間と洗剤のストックを用意する労力を考えたらそっちの勝ちよね」
「どれくらい高いの?3倍とかだったら流石にね~」
「いやいや全然!今までの液体洗剤と比べて…1.5倍くらいになったかな?でも柔軟剤もいらないし」
取り扱っているオンラインストアを教えてもらって、届いた日にすぐ試した。
洗濯機が動いている間にほのかに香るラベンダーの香り、この香りが特に気に入った。
主張しすぎない香り方、濡れた洗濯物が手肌に当たる感触までしっとりと優しい気がする。
聞いた通り、1回に使う量は心配になる程少ないのに、洗濯の効果は抜群だった。
「TEHの洗剤、いいじゃああああん!!」
地球環境を考えた優しい洗剤だけど、なによりママに優しい洗剤。
「確かにこれはママ友に教えたくなるわ」独りごちて、
わたしは洗濯物を干すのもそこそこに、スマホでLINEしまくったのだった。
ものがたりに登場する商品
THE洗濯洗剤 |
『ウールストール』
夜。
ピンポーンと届いた宅急便、段ボール箱を再利用して送ってくるから、
誰からかすぐわかる。
みかんと、里芋と、きっと誕生日プレゼントのつもりだろう、包装されたの箱があった。
開けると、好きな色味のウールストールが入っていた。
-お母さんにLINEしとくか。
浮かんだ考えは、子供が私を呼ぶ大きな声でかき消されてしまった。
朝。
「早くして!」何度も同じセリフで子供を急かす。
昨日届いたばかりのストールを羽織って、子ども急かし続けてようやく園に着く。
門を離れながら、私が10分早く起きれば子供に怒らず済むのにと今日も思う。
ストールをもう一巻きくるっと巻いて、職場まで自転車を漕いだ。
夕方。
職場を出る頃ストールを見て思い出した。
「あ、LINE」・・・とりあえず後回しにして、お迎えに行った。
自転車を止めながら、孫のお迎えにきたおばあちゃんと、挨拶を交わす、いつも通り。
-こんにちは、寒いですね。
-こんにちは。冷えますね。
-あら、そのストール、いい色ね。
-え。
いつもそんなこと言わないおばあちゃんなのでびっくり。
服や髪の変化に触れるのは、若いママ友だと思っていたから。
-自分で選んだんじゃないんですけど、地元の母が送ってくれて。
何か照れてしまって、聞かれてないのに、説明してしまう。
-お母さん、似合う色を知ってるのねぇ。
おばあちゃんがそういうので、気の利いた返しもできず、えへへ、と笑う。
子どもには「ありがとう」「どういたしまして」ってきちんと言いなさいって
言っているのに、いざとなると誤魔化し笑い。
教室から子供が出てくる声がして、子供が友達と連れ立って出てきた。
「おかあさーん」
おかえりー。手を広げて、子供を迎える。
「おかあさんのマフラー、あたらしい!」
子供がストールに手を伸ばす。
「ふわふわ!」
朝から着けてたんだけど、ああでも、朝は全然向き合えてなかったな。
ぎゅっと子供を抱きしめて、ここにいない自分の母を思い出した。
子供の頃の、冬。
その格好で寒くない?上着の前はちゃんと閉めときなさい!
一緒に出かけた帰り、薄着の私に巻いてくれた母のストールは、いい匂いがして暖かかった。
-ちょっと電話するね。座っといてね。
自転車の後ろに座った子供に毛布を掛けて、すぐに電話した。
-あ、お母さん?うん、届いとるよ、ありがとう。
母の温もりをストールに感じて、故郷がとっても懐かしくなった。
ものがたりに登場する商品
ウールストール | tanbo |
『スクエアバック』
ミモザの木の下でランドセルを背負って歩く
就学前らしい、幼い子供達が笑顔で歩く写真を見ていたら
彼がカタログを覗き込んで言った
「生田ランドセルのチラシや、懐かしい」
大阪生まれ大阪育ちの彼は、まさにそこで作られたランドセルを
使っていたらしい
当時少し離れたところに住んでいたおばあちゃんを父親の車で迎えに行って
それからみんなで、ランドセルを選びに行ったそうだ
「あれはばあちゃんからの入学祝いやったんやなぁ」
ピカピカ光るかっこいいランドセルを前にウキウキした気持ち、
背負ってみたときのふわっと軽い心地だけ断片的に覚えているらしい
「ランドセルが届くまで待ち遠しかってなー」
いつの間にか届いた机、その上に研がれてない鉛筆が並ぶ鉛筆立て
透明のシートが邪魔くさいからそれを外して ダイナミックなぬりえをしたら、
母に悲鳴をあげられたと彼は笑った
「俺、ばあちゃんにお礼、言うたかなぁ」
そのおばあちゃんも半年前に亡くなった
世の中がすっかり変わったこの一年、彼は仕事を変わることになった
彼が好きそうだと思って内緒で奮発した転職祝いの鞄を
実は同じ店で買ったんだよと今言おうか、届いてから言おうか
きっと驚くだろうな
『お礼を言われたくて買ってあげたんじゃないよ
新しい世界に立ち向かうあなたを応援したくて
そしてただただ喜ぶ顔が見たかったんだよ』
声に出したかったけど出来なかった
おばあちゃんの気持ちがぴったり今のわたしに重なった
新しい旅立ちを迎えるあなたに
ぴったりの鞄を見つけたよ
ものがたりに登場する商品
スクエアバック |
同ブランドの商品
リュックバック |
フラップバック |
『KIDS DISH』
「HAPPY NEW BORN!出産おめでとう・・・」
地元の友達から送られてきた小包を開けると、メッセージと一緒に
プレゼントが入っていた。
子供用の食器のセットだって。
ふにゃふにゃの我が子を抱いた彼が、隣で笑う。
気が早いなって。
そう、このヒト、気が早いんだよ。
妊娠伝えた途端すごく喜んじゃって。お祝い、何欲しい何欲しいって。
こんな食器使うのなんて、まだまだまだ先のことなのねー。
あはは。うふふ。
と夫婦で話してた頃が、本当に最近に思える。
もう、使う時がきたのだ、クマの形の器セット。
早い。子供の成長は本当に早い。
よその子の成長が早いって言う話は聞いたことがあるし
写真付の年賀状を見るたびに実感してたけど、
我が子もこんなに早いとは。
クマの形の食器セットは、届いた時のまま箱にきれいに詰めて
置いてあった。
メッセージカードも、そのまま。
『HAPPY NEW BORN!出産おめでとう
毎日を楽しんで、しっかり味わってね
子供ちゃんが使えなくなったら、保存容器として使ってね』
2回目に読むメッセージに、ニヤリと口角が上がる。
「だから、気が早いんだって」
気が早くて気が利く最高の友達。
クマの形をした蓋までつけてくれてたんだ。
「気も利くんだよね、このヒトったら」
難しそうで、少し尻込みしていた離乳食チャレンジだったけど、
カラフルな器の色が、味気ない離乳食を美味しそうに見せてくれるかも。
写真撮ってお礼を言おう、そうだ、
「自分の時の参考にしてよ!」って
10倍がゆの作り方も一緒に送っとこう。
ものがたりに登場する商品
KIDS DISH キッズディッシュ ギフトセット | ベアー |
KIDS DISH キッズディッシュ ギフトセット | スタンダード |
『日本人のためのサングラス』
ボールを追って走る子らの、辺り一面に舞いあがる砂埃。
フェンス際に並んで座るお母さんたちの、ささやかな歓声。
梅雨でも毎日雨が降るわけではないし、梅雨でも気温は30度を超す。
起きてすぐ眼鏡をかけるド近眼のわたしが、今日に限ってはコンタクトを入れた。
目も年を取るのか、昔は日差しの下でも構わず目を開けていられたのに
ここ数年は眩しくって仕方ない。
走り回る子供たちの姿をしかめっ面で見ていたらからか、給水に戻った息子に
「お母さん何怒ってるん」と言われた。
違うわ、眩しいだけだわ。
隣にいる夫は、とっくに夏はサングラスでしょ、みたいな顔をして
いつもサングラスを掛けている。
「かけたら楽だよ」と何百回も言われたけれど、
ドライアイでコンタクトが辛いんだよ、と返していた。
ところが最近のコンタクトレンズはやたらと進化していて、
目薬なしでも1日耐えれるようになっていたのだ、びっくり。
年々頑固になるね、なんて言われたくないので
柔軟な人間のフリをして、コンタクトを作りにいって良かった。
さぁこれで、子供たちのプレーをしかめっ面せず見られるぞ。
母の日で息子にもらったプレゼントのサングラスは
(きっとお金を出したのは夫なんだろうけど)
試着なしで買ったにも関わらず、わたしの鼻にちょうどよく
引っかかってくれる。
見つめる先で息子が転んだけど、駆け寄らずに表情を見つめた。
もう泣いてないな、どこも怪我してないみたい。
このたった二つの目をしっかり見開いて、君のプレーを見逃さずに応援するからね。
ものがたりに登場する商品
クラフトサングラス tokyobikeコラボモデル |
日本人のためのサングラス | MACHI |
日本人のためのサングラス | YAMA |
日本人のためのサングラス | SORA |
日本人のためのサングラス | HARE |
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