それぞれの " ものがたり "
『クタニシールキット』
物を落としたり、なくしたり。
私はとても注意不足な子供だった。
傘をさして出掛ければ、雨上がりの帰りには必ず傘を忘れ、
夕飯の片付けをすれば、手を滑らせてお茶碗を割るような。
そんな私に、両親はあえて、「特別なひとつ」を与えてくれた。
南の島で作ってもらった、名前入りのいるかのキーホルダーや、
自分でシールを貼って作る、世界にひとつの手作りお皿。
特別なものを手に入れて、私は考えた。
失いたくないものを、どうしたらずっとそばに置いておけるかと。
壁にピンを挿して、キーホルダーの置き場を作って、失くさないように、注意深く。
お皿を運ぶときも仕舞う時も、目をそらさずに丁寧に。
お皿の真ん中に貼った大黒様が小槌をかざして笑っている。
『ほーれ、気をつけて、運べや運べ』
「特別なたったひとつ」はどんどん増えたけれど、
わたしは物を失くさない大人になった。
物と向き合う姿勢は、両親と、お皿の真ん中で笑う大黒様が教えてくれた。
ものがたりに登場する商品
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クタニシールキット |
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